渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

鬼の国へ

定食屋で味噌汁にゴキブリが浮かんでいたのでカンカンに怒って店主を呼びつけたら、厨房の奥から金棒を持った真っ赤な鬼の巨体がこちらへ向かって来るのが見えたので、渡辺電機(株)さんは金も払わず一目散に店の外に逃げ出した。一息ついて歩き出したところで背後から店の自動ドアが粉砕される音が轟き、ヒィンッと泣き声を上げて四つん這いで逃げる渡辺電機(株)さんを、ドスドスと歩道の石畳を踏み割りながら、鬼の気配が猛烈な勢いで迫ってくる。おれっす、電機さん。甲高い声に振り向くと、鬼の顔はよく見ると、かつての親友・ラッシャ一板前その人だった。おれもう、殿や軍団のみんなに足蹴にされたり笑いものにされたりしたら、我慢すんのやめることにしたんだ。そしたら身体がこんなになっちゃってさ…。もう、みんな食っちまったよ。なあ、電機さんはおれのこと、怖がらないよな…?悲しげな笑顔で迫ってくる、板前の顔の赤鬼。そして、失禁したまま言葉も出ない渡辺電機(株)さんを肩に乗せ、鬼の国へ帰って行ったという。

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爆走ロケンロー!

渡辺電機(株)さんが「バンドやろうぜ!」に出したメンバー募集「当方ボーカル、全パート募集。完全プロ志向」に応募してきたのが全員おすもうさんだったので、急遽相撲部屋でも作って角界に殴り込みを…と思ったら、全員が相撲の傍ら本気で楽器の練習に励んでおり、最初のミーティングから自然発生的に始まったジャムセッションは、相撲界征服計画書を手に呆気にとられる渡辺電機(株)さんを完全に置き去りにして、ザッパも土下座する超ハイテク前衛ジャズロック大会となった。どこで道を間違うたんやろ…。ポリポリ頭をかきながら紀尾井町のスタジオを退出し、渡辺電機(株)さんはオオサンショウウオの姿に戻ると、弁慶橋からチャポンとお堀の水に飛び込み、二度と姿を現さなかった。

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アラブの旋風

街路に散らばる自爆テロの犠牲者の死体をヒョイヒョイと避けながら、着流しの上にドテラを羽織って雪駄の音も軽やかに、遊び人の渡辺電機(株)さんがバグダッドの街を行く。反政府ゲリラの検問で有り金残らず巻き上げられても、てやんでぇこちとら江戸っ子でぇ、宵越しの銭ぁ持たねえよ!そう言って、身ぐるみ剥がれふるちんのまま、砲撃で崩壊した街を闊歩する。今でも脳裏に蘇るその姿を思い起こす度に、横綱の表情にはなんとも言われぬ憂愁の蔭が差すのだった。あの時、助け出してやったばかりに、今こんなことに…。帰国後ただちに行動を起こし、今やふるちんで相撲界を牛耳る勢いの渡辺電機(株)さんを、自らの手で葬り去らねばならないとは…。

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アヘンのかあさん煮定食

豊満でふしだらな美人教師に放課後居残るよう命じられた渡辺電機(株)さんは、スッカリその気で女豹に食べられちゃう子羊の面持ちで一人教室の席に座り期待に胸踊らせ女教師を待ったが、やって来たのは「どっきり大成功」の看板を持った安倍総理だった。おい、一国の総理がすることかよ!思わず素のリアクションをとってハッと我に返り、慌てて頭をかきながら「も〜〜〜〜」とおどけてみせた渡辺電機(株)さんだったが、安倍総理は仏頂面で看板を渡辺電機(株)さんの足元に放り投げ、「ここまでしねえと選挙に勝てねえんだから、仕方ねえだろう」と吐き捨てた。そうか、国家元首もいろいろあんねんな…。同情の苦笑いを浮かべて総理の肩をたたいて慰めようとした渡辺電機(株)さんを、警護のSPたちの非情な機銃掃射が、ハチの巣にした。

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ウンコ・フロム・パリス

しましまの七分袖シャツにベレー帽、レコードバッグを小脇に渋谷区宇田川町を行く、90年年代渋谷系おじさん渡辺電機(株)さんは、下半身には何も身に着けておらず、冬の東京の木枯らしに、小ぶりのちんぽが寒そうに縮こまっていた。寒さに紅潮し、きゅっと締まった丸い尻は、エサと間違えたドバトに突つかれて血だらけになっていた。そして、目当てのオサレ輸入盤屋がとうの昔に潰れて、同じテナントに風俗の無料案内所が入っているのを目にすると、渡辺電機(株)さんはビヨヨヨーンという擬音とともに眼球を螺旋状に飛び出させ、下顎を地面スレスレまで伸ばす勢いで大口を開けて、ナ〜〜〜〜?と甲高い声で絶叫した。目を覚ませよ、電機さん。あんたの時代は、とっくに終わったのさ。振り返ると、全裸で猿轡を噛まされ四つん這いになった小沢健二とコーネリアスの二人の背にどっかと腰を下ろした安倍総理が、美味そうに一蘭のラーメンをすすっている所だった。ま、そりゃそうか…。総理、おれにもラーメン。だが、渋谷の街をふるちんで闊歩した渡辺電機(株)さんを待っていたのはとんこつラーメンではなく、冷たい手錠だった。パトカーに押し込められ走り去った渡辺電機(株)さんの姿を見ることは、二度と無かった。

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恋のアタック大作戦

ぼ、ボクは一万円札がほしいんだな…。坊主頭にランニング姿でキョトンとした顔の中年男、渡辺電機(株)さんが白痴のフリをしておねだりした相手は、21世紀を代表するアイティー時代の寵児、ホリエモンその人であった。男の娘とは言っても所詮はおっさんだな…と、今のステディにも飽き始めていた彼は、渡辺電機(株)さんの穢れを知らない瞳に、全身カミナリに打たれたかのような衝撃を受け、その場で結婚を申し込んだ。オレと結婚してくれ〜〜いッ!い、いやボクはお金がほしいだけなんだな…。そんなこと言わず、待ってくれ〜〜い!!丸い地平線上を、太ももの異様に上がったダイナミックなフォームで走って追いかけっこを展開する二人の、モンキーパンチ風のシルエットをバックに、スタッフロールが流れ、エンディングテーマのThe Damned「Neat Neat Neat」が鳴り響く。こんなことが毎週、4クールも続いたという…。

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松屋の陰茎

夜の混雑する松屋で、カレギュウがぬるいから作り直せと店員を居丈高に怒鳴りつけ、周囲の客から罵声と水と紅ショウガを浴びせられスゴスゴ引き下がった渡辺電機(株)さんだったが、決してあきらめはしなかった。平日の真ッ昼間なら、ガラ空きで邪魔するやつもいねえだろう。松屋の店員め、首くくって待ってろィ!勇んでパンツを履くのも忘れふるちんでスッ飛んで行った渡辺電機(株)さんだったが、松屋のカウンターの中で仁王立ちしている店員は、やっぱり横綱の変装だった。なんでチョイチョイ邪魔しに出てくんのよ。ふるちんのまま肩をすくめボヤく渡辺電機(株)さんに、横綱が表情を変えず無言で差し出した手の平には、まだ湯気の立つ血を滴らせ小刻みに震える、もぎたての陰茎が乗っていた。いったい誰の…?謎を解き明かすため、渡辺電機(株)さんはパリへ旅立つ。

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