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渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

先生の思い出

三条大橋で肩がぶつかったなど些細な事が原因で口論となった会津藩士数人と乱闘になり、素手で藩士たちの首を次々もいで鴨川に投げ捨てたという伝説を持つ渡辺電機(株)さんだが、その怪力と逆上すると手がつけられない凶暴さとは裏腹に、普段は目立たずおとなしく従順で、ぽつんと1人座ってオカメインコのピーコちゃんを可愛がる、内気で心優しい大男であった。漫画の背景の作業も人一倍おそく、締め切りも重なったある夜、とうとう師匠の石ノ森章太郎を怒らせ、可愛がっていたインコを檻ごと踏み潰され殺されてしまった。ピーコちゃんを殺されたと知った渡辺電機(株)さんは、お"お"お"と野太い咆哮を上げながら、世話になった師匠の石ノ森に襲いかかった。怒りを込めた巨大な拳が頭上に振り下ろされたと思った刹那、石ノ森はそこにはいなかった。「やればできるじゃないか」天井の梁に片手でぶらさがり、快活に笑う石ノ森の肩には、殺されたはずのオカメインコが、目をきょろきょろさせながら止まっていた。「その怒りを忘れるな、渡辺。お前はいつかきっと、世界を変えるまんがを描く漢だ」「石ノ森先生!」おかっぱ頭にオーバーオールの大男が、子供のように泣きじゃくった。だが翌日、会津藩の意を受けた新選組の急襲により石森プロは壊滅し、渡辺電機(株)さんも命を落とした。文久四年の、秋のことだった。

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どうどう野郎

「ソース二度漬け禁止」と張り紙のされたカウンターで、これならいいだろ!と、まずサクサクのカツをしゃぶって存分に食感を味わってから、ヨダレでふやけたカツを堂々とソースに漬け、「してやったり」の表情で頬張った渡辺電機(株)さんは、その度胸が認められ、今ではメキシコ市長として汚職の根絶と麻薬犯罪の撲滅に辣腕を振るっていると言います。

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ルチャドールになるために

元レスラーでメキシコを転々としていたというウソの経歴でハクをつけ、ルチャドールの日常あるある4コマで大ヒットを飛ばし巨万の富を得たが、六本木ヒルズで開いた初めてのサイン会には世界中のマスクマンが押し寄せ、口々におれのうそを暴いて詰め寄った。抗うすべもなく彼らに拉致されたおれは、メキシコの砂漠にそびえ立つエル・サントの屋敷に連れてこられた。大広間に引き立てられ、半泣きで這いつくばるおれの前に、馬ほどもある巨大ドーベルマン数匹を従えた屈強な影が、静かに立っていた。「コロセ!」「コロセ!」いきり立つルチャドール達に向けて、影が静かに右手を上げると彼らは押し黙り、辺りは静寂に包まれた。「言葉はいらない、日本人よ。おまえの罪は、レスリングで私を倒すことによってのみ、贖われるのだ。さあ、立て」おれが圧倒的な力の差でサントをねじ伏せるなどと、その時点で誰が予想できただろうか。新しいメキシコの英雄・渡辺電機(株)の誕生であった。

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変態五輪書

リオのオリンピックは大成功のうちに幕を下ろしたが、おれたちの変態オリンピックはこれからだ!そう絶叫して、全裸でオリンピック高円寺店の屋上めざしてよじ登り始めた渡辺電機(株)さんは、下を見たら足がすくんで身動きできなくなり、セミのように外壁にしがみついて号泣しながら失禁しているところを、猟友会の有志によって射殺され、今でもその時のままの姿の剥製が、高円寺駅改札前に飾られている。

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ファイナルファイト

あなたね、包茎手術しないとこれ、ちんちん取れちゃいますよ。女になっちゃうの。ね、今スパッと切っちゃいましょ。簡単簡単、5分で終わります。スッキリしましょ。おーいこの後オペ入ってたっけ。ない。はいオケ。決まり。じゃあさっさと済ませましょう。ね。そう言って笑顔でおれの手をとったドクターのうなじから、ほんのりとお風呂の香りがおれの鼻をくすぐった。やっぱりてめえか。顔面めがけて打ち込んだ渾身の正拳突きを、白衣に身を包んだ白鵬は間一髪かわし、ガッチリと右四つに組んで、左上手に手をかけた。だが、おれが素早く右の差し手を返してこれを防ぐと、白鵬は瞬時にもろ差しに狙いを替え、左を差し替えしてきた。その瞬間を待っていたおれの強烈な左上手ひねりで、横綱が仰向けに転がった。な、なにをするんですか。ドクターは鼻血を流し、割れたメガネ越しにおれを見上げた。2人が暴れた診察室はメチャクチャで、おれは威力業務妨害と暴行容疑で逮捕され、包茎も治らなかった。

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褐色の侵略者

けいさつ?ここはけいさつじゃないよー。スッとぼけてその場をしのごうと思ったおれの演技もむなしく、ドアはショベルカーにブチ破られ、屈強な黒人警官が集団で部屋になだれ込んできた。問答無用でうつ伏せにされ、後ろ手に手錠をかけられながら、形式的に弁護士を呼ぶ権利や黙秘権についての説明を読み上げる警官の首筋には、ガッチリとクワガタムシの角が食い込んでいた。麻薬所持の有無の検査を言い渡され、うつ伏せのままパンツを脱がされ丸出しになったおれのケツの穴に、手術用のゴム手袋をはめたカブトムシの角が、メリメリと侵入してきた。

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ザ・インセクト

クワガタムシは、身を全部食べたら、最後は甲羅になみなみと熱燗を注いで飲み干すと、ほんのり虫の香りが広がってンマい!!とかデタラメを言ったら、信じるバカがいるんだよなあ!と笑うと、それまで差し向かいで上機嫌で盃を重ねていた横綱千代の富士が、急に黙りこんでブルブルと拳を震わせ始めたんですよ。こりゃあシマッタね。いや、実際ンマいんだけどさ…と、慌ててフォローしても、もうあとのまつり。そんで次の日がほら、例の吊り落としで土俵に叩きつけられた、あの相撲ですよ。懐かしそうに笑う元寺尾の錣山親方の笑い声は、次第にケケケケ…と甲高い怪鳥音に変わっていき、小刻みに激しくケイレンしながら、くるくるとその場で回転を始めた。その首筋には、ガッチリとクワガタムシの角が食い込んでおり、すでに彼が自らの意思ではなく、昆虫の意のままに操られていることが、ハッキリと分かった。

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