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渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

The big space fuck

サークル随一のナルシスト篠原は、うっかり勃起時の硬度を自慢したばかりに、豚のチンポのようだ、ドリル状に高速で回転するのだろう、ブタチン篠原と笑われ、目を潤ませ憤然と部室を飛び出して行った。ヴォネガットを愛し、密かに作家を志し投稿もしていた彼だが、サークルで才能を認められることはついに無く、後輩の女子に手を出してこっぴどい目に遭うなど経て、就活が始まる頃には部室にも顔を出さなくなった。それから三十余年。京極夏彦氏、森見登美彦氏など娯楽小説界の大物作家が、相次いで豚に肛門を陵辱され病院に担ぎ込まれる事件が起き、文壇を震撼させた。ああ、篠原が帰ってきたんだ。おれは何だか嬉しくなり、事件の詳細が載っている週刊文春を買うべく、夜更けのコンビニへ向かった。背後で何かが高速で回転する音が、だんだん大きくなって来るのに、おれはまだ気付いていなかった。

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La Planète des Singes

砂浜に埋もれた自由の女神像を見て「アッここは未来の地球だったのかッ」と気づく名場面、最初の設定では「アッ俺これ映画で見たことありますよ!そうやそうや、猿の惑星や!」というブラマヨ吉田のセリフとともに一気にメタフィクションの世界に入っていく二重構造のストーリーだったのが、時期尚早ということで見送られたそうですね。来年公開のディレクターズカット最終版で、やっとそれが実現するとのことで、楽しみです。

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サバンナ

急ぎの原稿を一本上げ、ちょっと遅めの夕食をとって、風呂に入ったらもう日付が変わろうとしていたので、そのまま寝た。寝入りばなに何者かが布団の中に入り込んできて、生暖かい手のひらでおれの口を塞ぐ。もがいて振りほどこうとすると、耳元で聞き覚えのある声が囁く。「わしやわしや、坂東や」「師匠何してますのんこんな時間に。冗談やめて下さいって!」跳ね起きようとしたが、元プロ野球選手の坂東の両腕はモノスゴい力でガッチリおれの身体を挟み込み、離れようとしない。「たのむで渡辺くん、かわいがってえな」甘えた声でおれのうなじに脂ぎった顔を埋めてくる。鼻を突くヤニ混じりの加齢臭。「キミかて黒んぼクサイクサイ言われて女にもてへんのやろ?な?」思わず口走った坂東の薄汚い本音が、おれの身体に眠っていたアフリカの血を呼び覚ます。頭のなかに鳴り響く打楽器の乱打。熱い砂埃。疾走るガゼルの群れ。気がつくと、おれは上半身裸で全身に血を浴び、ビルの屋上から屋上へと飛び移り、東京の夜空を疾駆していた。右手に持っていた重い塊を投げ捨てる。生首と思しきそれは、壁をバウンドしながらビルの谷間の闇へと、消えた。おれはなおも内なる声に駆り立てられ、大きな満月に向かって夜の闇を走り続けた。

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カメレオン

ガヤの手数の多さがさんまさんに認められて、バラエティの常連として茶の間を賑わせてきたおれだが、楽屋でウロコを剥がしている所を、挨拶に来た若手に見られてしまい、すべては終わった。爬虫人類のスパイとして監獄に入れられたおれは、裁判を待たず直ちに処刑されることが明白だったが、こんなおれに面会に来てくれたのが誰あろう、明石家さんまさんだった。すいません、番組穴開けて。ええがなええがな、お前のおかげでほんま助かってたんやで。できれば逃してやりたいけど、さすがのオレにもそこまでの力は無いわ。すまんな…。そう呟いて、静かに首を振って目を閉じたさんまさんの頭を、おれは丸ごとパクリと頬張った。じたばたともがく身体を押さえつけ、ぐいぐいと飲み込んでいき、ポンと靴が脱げる音とともに、全身がおれの胃の中に収まった。コロンと転がった高級そうな靴に履き替え、ハンガーに掛かっていたバーバリのコートを羽織ると、おれの姿はどこから見ても、さんまさんそのものだった。おれは看守に軽く会釈して、堂々と監獄の外へ出た。これから、明石家さんまとしての忙しい日々が待っている。

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戦国武将風雲録

豊臣家に勝利した徳川家康。だが、日本の大名の頂点に立った彼の心には、むなしさだけが残った。「そう、世界にはもっと強い大名がゴロゴロいるんだ…!おれの天下統一は、まだ終わっちゃいねェ!」と、家康はアメリカに旅立つ。成田空港には、見送りに来たかつてのライバルたち、豊臣、織田、明智、武田らの姿が…。みんなあばよ!世界一でっかい大名になって帰ってくるぜ!そういって餞別やカンパを集めながら実際には出発せず、なんだかんだと言い訳をしてはダラダラと自堕落な暮らしを続け、次第に友も信用も失って行った。働きもせず、金に困ると天下統一Rebootなどと称して、駅前で詐欺まがいの募金活動などをしていたが、大阪城陥落から4年目の正月、安アパートの一室で冷たくなっているのを、おせちを持って訪ねてきたかつての家臣たちに発見された。室内にはワンカップの空き瓶が散乱し、所持金は殆ど無かったという。

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さなぎの話

シロアリ駆除を区の生活保全課に頼んだら、やって来たのは長い顔を覆ったマスクの下から長い舌をべろべろさせた、明らかにもののけが人間に化けた奴だった。あんた本当に区役所の人?それよりご主人、アリの巣はどこに。床下を指し示してやると、返事もせずに鼻息荒く縁側の下に這いつくばって潜り込んで行き、それきりお茶の時間になっても出てくる気配もない。いい加減呆れて、おれも乾燥大麻の小分けの作業に戻ったが、時折床下から喜悦の声と舌なめずりが聞こえるだけで、その日はとうとう出てこなかった。それから一週間。そいつの事もすっかり忘れて、包装した大麻を発送し終えてヤマトの出張所から戻ってくると、玄関の軒下に巨大なサナギが出来ているのに気付いた。また区に電話して駆除させようかとも考えたが、とにかくシロアリが姿を消したのは確かだし、とりあえず羽化したら話を聞いてみようと言うことになり、さらに一週間後の今。風呂上がりで缶チューハイ片手に、軒下でピクピク動き始めたそいつを見上げているところである。

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おすすめ!北海道路線バスの旅

名寄から旭川空港を経て東京に戻るのに、行きと同じ宗谷本線の特急では芸がないなと思って調べたら、廃線になった旧深名線のルートに沿った路線バスが運行していることが分かり、ひとつ朱鞠内湖の雪景色でも眺めながら、深川経由でのんびり帰りましょうと、名寄駅前に停まっていたおんぼろのバスに乗り込んだ。それが間違いだった。バスは深川どころか、幌加内辺りで幹線道路を外れて山に分け入り、人気もない廃坑の入り口で、終点となった。バスは引き返すこともなくボンとエンジンから黒煙を吐き、みるみるタイヤが萎んで、それきり動くことはなかった。ちらちらと雪が舞い始める中、運転手に声をかけようと運転席を覗き込むと、苔むしたシートに埋もれて、朽ちた白骨があるだけだった。

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