渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

ルイジアナ・ママ

ニューオーリンズで本物のジャズを学んでくる!と、吹けもしないトランペット一本持って英語もわからないまま日本を飛び出した渡辺電機(株)さんは、案の定アッと言う間に無一文のホームレスと成り果て、今ではWEBコミックサイトに漫画を連載して、細々と中の上くらいの生活をしているという。今日は、行きつけのウォルマートで夕方、活きのいいヒラメが半額で出ていたので購入、煮付けにして他に千枚漬け、なめこ汁、庭で採れたミョウガの酢の物と一緒に、いつもよりちょっと豪華な夕食に、舌鼓を打った。今でも街でジャズが流れてくると一瞬立ち止まるが、もう未練は無かった。そんなある日、彼を訪ねてきた一人の若者があった。名を、プリンス・ロジャーズ・ネルソン。後に、世界の音楽シーンの頂点に立つ男である。(続く)

続きを読む

人形の街

ハゲヅラをかぶり、白粉や頬紅をつけて口の周りに炭を塗り、腹巻きにステテコのオヤジコスプレで児童公園に出没し、「くやしいですッ」「かいーの」「アイーン」「生活かかってっからネ」などの定番ギャグで子どもたちを笑わせて、最後に得体の知れない一つ目の人形を売りつけていた、通称人形おじさんこと渡辺電機(株)さんは、父兄の通報で駆けつけた警官たちに両脇から抱え上げられ、いやいやをして泣き叫びながら、パトカーに押し込まれ連れ去られた。次の日曜、いつものように公園に集まってきた子どもたちは全員、目がひとつしか無かったという。

続きを読む

ハートキャッチ電機ちゃん

学園のマドンナで処女の男嫌い、聖母のように優しい巨乳ヤリマン美女、一見カタブツのメガネ少女だがその正体は超有名なSMの女王様!の仲良し三人組が織りなす女子校ハートフルコメディ「にゃんにゃん♡パラダイス」の大ヒットで知られる渡辺電機(株)さんだが、コミックスの7巻にあたる「泳いで孕め!ザーメン遠泳大会」のエピソード執筆中に神の声を聴き、作風をガラリと変えた。突如展開を変え、心を入れ替えた主人公たちが、神の導きに従って邪淫の徒を成敗し、長々と神秘語りをかます作品は、人気も急落する。編集者の説得にも逆に神の教えを滔々とまくし立て、ついには鬱状態に追い込むに至り、連載は尻すぼみに終了。以後ふっつりと消息を絶ち、久々に世間に姿を表した時には、先鋭的な音楽と斬新なダンスで、人々を魅了した。その時彼は、ジャミロクワイと名乗っていたのである。

続きを読む

おすもうさんのうた

両国国技館。慈善大相撲の歌謡ショー、越路吹雪になりきって渾身の「サン・トワ・マミー」を歌い上げる渡辺電機(株)さんに、観客席を埋め尽くす力士たちのジャッジは容赦なかった。おいおっさん、声震えてんぞ。誰だてめえ。きこえませーん。オナニーの邪魔なんですけどぉ。歌声をかき消さんばかりに降り注ぐ野次の中で気丈に歌い続ける渡辺電機(株)さんを救った、一喝。てめえら、人が一生懸命歌ってんだろうが!この人もおれたちと同じ、命を削ってんだよ!息を呑み、静まる観衆。やがて場内に感動のすすり泣きが広がり、歌が終わると割れんばかりの拍手、満場の力士たちの織りなすウェーブ、アンコールの嵐。それが、渡辺電機(株)さんと横綱日馬富士との出会いであった。それがいったいどう転んで、オカマ漫才のコンビとして花月の舞台に立つことになったのか…。

続きを読む

はるか悪夢の址

酒の肴を買ってこい!渡辺電機(株)さんに足蹴にされ、そう命じられた書生の若き安倍晋三は、黙って雨の降る夜の街を、裸足で走った。いくら世話になっている代議士の先生とはいえ、あんな下品な酔漢を尊敬などできるわけもないが、帰る家も親もない彼には、そうするしか無かったのである。あれ?なんかおかしいな。肴のビスコを口いっぱいにほおばって日本酒をガブ飲みする渡辺電機(株)さんに全裸で酌をしていた安倍晋三は、なんだか落ち着かない気持ちに襲われた。おれには実家もあるし、そもそも総理大臣になったはず…。周囲の景色がぐずぐずと崩れ落ちていく中で、視界の中央に眩い朝の陽が射す。目が覚めて夢は終わり、日本国総理大臣としての忙しい1日が、始まろうとしていた。それでもまだ安倍総理の枕元で、ビスコを肴に酒を飲み続けていた渡辺電機(株)さんは、昭恵夫人の呼んだ警官の銃で撃たれると、裏声でウフフフッと笑い、煙のように崩れて消えてしまったという。

続きを読む

地獄の軍団

キッスに加入しないかネと、ジーン・シモンズ本人に誘われて、さすがに悪い気はしなかった渡辺電機(株)さんだが、キミは素顔のままで十分イケるからと、他の3人がいつものメイクを決めている中にすっぴんで放り出され、しかも現場の誰もが自分をピーター・クリスと思って疑わないことに気づくと、すっかり不機嫌になってしまった。おい、あんま愉快な気分じゃねえんだけどな、おれは。サウンドチェックに余念のないジーン・シモンズの背中に不満の言葉を投げかけると、ゆっくり振り返ったその顔は、どう見ても横綱白鵬の変装だった。ガックリ。あんた、九州場所も始まってんのに、何やってんの。先場所優勝したし、いいじゃん今場所は。アッチはアッチで、適当にやってもらうよ。そう言って指し示したTVの画面には、まさに九州場所結びの一番の土俵が映っていた。呼び出しの声に応じてヨロヨロと土俵に上がった横綱は、どう見てもジーン・シモンズの変装だった。

続きを読む

カリオストロの城

泥棒です。取り澄ました態度で挨拶をしてみせた伊達男の侵入者に、クラリスの言葉は容赦なかった。うそつけ、泥棒じゃなくて人殺しだろ、ひとごろし。いや、そ、それはドラマを盛り上げる必然性の…。言いかけて、話を聞いてもらえる感じではないと悟った男は寂しく笑い、今はコレが精一杯、と小さな手品を披露して見せたが、クラリスはニコリともせず、それダイソーで売ってたわ。と、吐き捨てた。帰れよ、ひとごろし。そうしないと、このおれの戦いの血が疼いちまうだろが。不穏な言葉に顔を上げた男の目の前で、全身から野獣の殺気を放ちながらユラリと立ち上がるクラリスのシルエットが、闇に浮かび上がった。二人の間の空間が、クラリスの放つ闘気でグニャリと歪むのが、男にもはっきりと見て取れた。

続きを読む