渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

監獄惑星

で、おめえ何やらかした。牢名主の渡辺電機(株)さんが、高く積み上がった座布団の上から、声をかける。へえ、相撲の八百長を少々。ちょんまげのヅラと肉襦袢で横綱に変装してはいるが、その声は聞き違えようもない、明らかに安倍総理の変装だった。アンタ外交問題で忙しいんじゃないの。何やってんのこんなとこで。呆れて渡辺電機(株)さんが座布団の上からTENGAを放り投げると、安倍総理はバレたかあと笑顔を見せ、美味そうに新鮮なTENGAにかぶりついた。トランプの野郎がさ、要求飲まなきゃ核戦争だっつうから、なんかもうめんどうくさくなって。え、じゃあミサイル来るの。慌てる渡辺電機(株)さんにはめもくれず、安倍総理はしらね、と呟いて目をつぶり、シュウシュウ白い糸に覆われ始め、みるみる大きなマユになってしまった。戦争はたまらんし、まいったなあ。渡辺電機(株)さんは囚人たちと協力して大きなマユを運び出し、トランプ大統領の元へ届けたが、彼もまたホワイトハウスで、大きなマユになっていた。こうして世界中の国家元首はみなマユを経て蛾になって、どこかへ飛んで行った。仕方なく世界連邦初代総統となって世界を支配した渡辺電機(株)さんは、アンドロメダ星系バルトリン第2惑星のスパイに暗殺されるまで、280年の生涯にわたって血の恐怖政治で銀河系を支配したという。

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殺人酋長ジェロニモ

稽古場の隅に丸まっていた毛の塊を、なんじゃこりゃとつま先で触れてみて、横綱はヒヤッと悲鳴をあげた。どうせ高安の体毛が抜けて毛玉になってのだろうと思ったそれは、長い毛に覆われた柔らかく暖かい、湿った生き物だった。なんだ、生きてんじゃん!高安の毛かと思って踏み潰すとこだったよ。いや、おれの毛っす。声に振り返ると、あの毛深い高安が全身ツルツルのパイパンで、頭髪も眉毛もない、すべすべの丸い塊と化して、立っていた。おれの毛を、渡辺電機(株)さんに植毛したんです。今やつるんとした丸いすべすべの物体となった高安の姿に激しく欲情した横綱は、高安の言葉が終わらないうちに、鼻息荒くのしかかって行った。背後で、毛の塊となった渡辺電機(株)さんが、毛をわさわさと逆立てて身を揺らし、そしてまた静かになった。

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要塞警察

地下鉄車内で見知らぬ中年男性の金玉を鷲掴みにして警察に突き出された渡辺電機(株)さんが、横綱を呼べば取り調べに応じるとうそぶくと、刑事たちは爆笑して渡辺電機(株)さんの頭を小突き、口の減らない悪ガキだと呆れたが、いざ本当に横綱が現れるに及んで、全員腰を抜かさんばかりに驚いた。よ、横綱これはようこそ…。慌てて出迎える口髭の警察署長を押しのけて取調室に乗り込むと、横綱は「電機!」と怒声を発し、思わず首をすくめる渡辺電機(株)さんの頬を平手打ちした。壁まで吹っ飛んで動かなくなった渡辺電機(株)さんを忌々しげに睨みつけ、ったく世話ばかり焼かせおって…と吐き捨てると、横綱はあんぐり口を開けたままの署長に向き直り、この件はくれぐれも内密に頼みますぞ!と耳打ちし、さあ帰るぞ不孝者が!と渡辺電機(株)さんを引きずり起こし、大股に取り調べ室を出て行った。次の日の大相撲中継、泣きじゃくりながら不知火型の土俵入りを披露する渡辺電機(株)さんの姿が、あった。その頃横綱は、地下鉄車内で見知らぬ中年男性への痴漢行為が露見し、取り押さえられていた。

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人食い蛾の恐怖

敢えて音痴を入れることで化学反応の奇蹟に期待するという苦肉の策で、売上低迷期のCHEMISTRYに加入した渡辺電機(株)さんだったが、あまりな音程の外れっぷりが「可愛い」と、相撲の親方夫人や地下アイドルの父兄を中心に人気が爆発。結果的に他の2人の嫉妬を買うことになり、ステージ衣装の西洋甲冑の中にハリネズミ100匹を入れられたり、MCの音声をイコライザーでアニメ声に変えられるなどの嫌がらせを受け、これが更に人気を呼び、いよいよ影の薄くなった他の2人が脱退させられ、CHEMISTRYは渡辺電機(株)さんのソロユニットとして存続して行くことになった。この体制で発表した三枚のアルバムはいずれも世界的なメガヒットを記録、グラミー賞の呼び声も高まった段になって突然、渡辺電機(株)さんは巨大なサナギになってしまった。一週間後に羽化した人食い蛾人間はすでに渡辺電機(株)さんの記憶もなく、世界中の人間を食い殺してしまったが、元CHEMISTRYの2人にだけは、決して手を出さなかったという。

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烏天狗女子高生

生まれ育った風魔の里に火を放ち、抜け忍となった渡辺電機(株)さん。幼い頃から殺人技を教え込まれ、数えの9歳の夏、共に育った幼馴染たちと殺し合いをさせられ、只一人生き延びた渡辺電機(株)さんだけが、暗殺者として更なる英才教育を施され、ゆくゆくは明智光秀の忍びとして命を捧げることになる。非情な運命に抗って逃げた彼を、ダーティペアの黒Tシャツに身を包んだ数千人の太ったおたく族が、付け狙う。そんな妄想に取り憑かれ、先手必勝で太ったダーペアTシャツのおたく族を殺すべく、コミケの会場に現れた渡辺電機(株)さんだったが、すでに時代は変わり、彼の思い描いたおたく族は、とうの昔に絶滅していた。渡辺電機(株)さん本人を除いて…。巨体を揺すって泣きじゃくる、薄い頭髪をバンダナでまとめた、初老のメガネ肥満男。それでも心だけは、忍術を極めたエリート殺人者なのだ…。

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孤独のグルメ

ゴリラの肉って、うめえのかな。興味を抱いたら、即行動。アフリカに単身渡った渡辺電機(株)さんは、ケニアの首都ナイロビの目に付いた定食屋に入り、おばちゃんゴリラ定食!と店の奥に声を掛け、カウンターに腰を下ろす。あいよ、ゴリ定一丁!きっぷの良い返事とともに目の前に置かれる、ビールのロゴが入ったコップ。冷えた水道水を一息で飲み干した渡辺電機(株)さんは、古ぼけたブラウン管テレビに映る、巨人対南海の日本シリーズに、夢中になって行った。打てよ門田!ゴリ定お待ちっ!皿に盛られた何かの生首は、焼きたての香ばしい湯気を立て、頭には大銀杏を結っている。それに気づかないまま、渡辺電機(株)さんは南海ホークスの応援に夢中になって、大声でやじを飛ばしていた。

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墓碑銘2018年

私は世界の全て。私は、宇宙そのもの。渡辺電機(株)さんがそう言って、一糸まとわぬ全身に星空をペイントし、「宇宙は此処に在り」の幟を背負って、颯爽と秋葉原の歩行者天国に飛び出すと、群集はモーゼの十戒のように割れ、渡辺電機(株)さんの行く手に人垣の花道を作り出した。ようこそ宇宙、待っていたぜ。人垣の先に敢然と立ちはだかる、大きな影。裸の全身を純白にペイントした横綱が両手を広げ、温かい笑みを浮かべている。おれは、虚無だ。お前は全て、おれは無。ひとつになろうぜ、電機さん。横綱!弾けるような笑顔で駆け出す、渡辺電機(株)さん。無と全がひとつになる時、何が起きるのか。群集が固唾を呑む中、渡辺電機(株)さんの銀行残高は目まぐるしくデジタル表示を変化させながら。モノスゴい勢いで減り続けていた。

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