渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

おふくろ

渡辺電機(株)さんの実家に親友である横綱がお泊りしに来るというので、両親はことのほか喜んだ。とりわけ母親は大学で留年を繰り返しブラブラしていた渡辺電機(株)さんの行く末を心配してお百度を踏んだ過去もあり、息子の更生を喜び、立ち直るきっかけを与えてくれた横綱をもてなそうと、3日前から手料理を用意して、横綱の来訪を待ちわびた。当日、黒のリムジンから降り立った横綱は、粗末な作りの渡辺電機(株)さんの生家を眺めて軽く鼻を鳴らし、来訪への感謝の弁をくどくどと述べる両親を軽くいなして、座敷へ勝手に上がり込んだ。じゃ、電機さん。やろうよスマブラ。テレビの電源を入れようとする横綱を、渡辺電機(株)さんは慌てて制し、一応ほら、親の手料理食べてってよ。と、ちゃぶ台の上に並ぶ料理の数々を指し示したが、横綱はバツが悪そうに小指で鼻の頭をかきながら、おれ肉と野菜ダメなんすよ。そう言って、取り出したカロリーメイトをむしゃむしゃと食べ始めた。電機さんやんないなら、おれ勝手にやってるよ。そう言って、あとはひたすら無言でゲームに没頭する横綱の大きな背中を、母親がなんとも悲しげに眺めているのを、渡辺電機(株)さんはどうすることもできなかった。だからって、なにも両国に原爆を落とすこたぁねえだろう!机を叩いて罵倒する刑事を一瞥して、渡辺電機(株)さんは口を尖らせて横を向き、あんたにはわかんねえさ。そう低く呟いて、あとは死刑執行まで一言も喋らなかったという。

Sinä olet hän

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