90年代初頭、レイヴ真っ盛りのイビザ島を訪ねたっきり消息不明になってしまった渡辺電機(株)さんを、どうせヤク漬けの廃人になって日本に帰る金もなく、乞食かヒモにでもなっているか死んでるのだろうと、タカをくくっていた安倍総理だったが、予算委員会の長く退屈な会議を終えて執務室に戻って来たら、アッと驚いた。わ、渡辺電機(株)さん。生きてたのか…！髪を肩まで伸ばし、中学校の校名入りの青のトレシャツトレパン姿で、肩にラジカセを担いだ渡辺電機(株)さんがニヤリと笑うと、総入れ歯の金歯がギラリと光った。仕入れてきたぜ、"イマ"の音ってヤツを。二人で世間をアッと言わせようぜ、最先端のダンスミュージックでよ…。いやいやいや、電機さん。安倍総理は勧められた太いマリファナの葉巻を慌てて押し返し、さり気なく執務机の裏に仕込んだ緊急連絡用のボタンを押した。おれはもう昔とは違うんだよ、電機さん。帰ってくれ。いつしかSPの銃口に囲まれて、渡辺電機(株)さんは寂しそうに笑い、おめぇ昔は、そんなにつれなくなかったのによう…。そう呟くと身体の内側からぼんやりと光り始め、ついには強烈な五色の光を放ちながら、天に昇って行った。宇宙神だったのである。宇宙を敵に回した日本政府の命運も尽きたと思われたが、安倍総理自ら率いる、500隻の空母と２億の宇宙戦闘機からなる宇宙制圧艦隊が地球を旅立ち、宇宙神との全面戦争に勝利し、地球文明は偉大なる安倍総理のもと宇宙へ進出を続け、ますます発展した。
