渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

立花屋菊太郎


給料は片っ端からススキノのボッタクリヘルスに巻き上げられて常に金がないので、実家に眠っている、買いっぱなしで読んでない大量の化石SFを、ちまちま消化しています。40年くらい前はアンソロの常連だった英国のE・F・ラッセルの短編集「わたしは"無"」。作品が書かれたのは1941年から1953年の間、短編集が編まれたのが1965年、創元文庫で翻訳版が出たのが1975年、オレが古本屋の段ボールから救出したのが1991年頃、そして読んだのが2009年。これだけの旅路を経て人々から忘れ去られ、Amazonのリストにも載っていない骨董品。さすがに今の時代にSFとして通用するものではありませんが、秘境小説の古典と割り切れば、英国モノ独特のペシミズム漂う抹香臭い寓話の数々が、なかなか楽しめました。冒頭の救いの無い中編「どこかで声が…」なんて、いま普通に映画化したら面白いんじゃないのか。えぐり出す人間の醜さが「差別」「傲慢」辺りでとどまってんのが、いかにも古臭いけど。ま、この手のがまだまだ実家に山積みになってるんで、完全に時代について行けなくなったら読みふけって廃人になることにします。