電機さん、ウチ部屋の庭の池で松葉ガニとムラサキウニが大発生しちゃって困ってるンで、ちょっと始末してくれませんか。という横綱の誘いにまんまと乗って、タッパーにパンッパンの寿司飯とカニの足用フォークを持ってスッ飛んで来た渡辺電機(株)さんを指差し、ちゃんこのカニしゃぶとウニの軍艦巻きに舌鼓を打っていた力士たちは、意地悪い大声で爆笑した。おめぇの分なんかあるかぁ、っばぁ〜〜か！！それでも渡辺電機(株)さんは従順な笑顔を絶やさず、ちょこんと稽古土俵におすわりをして、キラキラした瞳で力士たちを見つめた。そ、そんな目で見るんじゃねェよ…。流石に根負けした横綱が小皿に盛って出してやった軍艦巻き２貫とカニ肉を、野獣のように奪い取って一飲みにすると、渡辺電機(株)さんはスックと立ち上がり、微笑んだ。ありがとう、地球のトモダチ。最後にご馳走になった。これで、お別れだ…。そう言うなり五色の光に包まれ、天高く昇って行った。宇宙神だったのである。神を嗤った力士たちは皆、怪我や疾患に苦しみ失意のうちに土俵を去ったが、横綱だけは怪我もなく衰えを知らず、56億年の長きにわたって土俵に君臨し、弥勒となったという。
