マーズアタック

おれも遠からず引退して、今の部屋を継ぐか、独立して部屋を興すか。どっちにしたって相撲の親方業も右肩下がりで、あんまパッとしねえ未来だなと思ってたらさ、ゴールドマン・サックスから五億ドルで部屋を買収したいっつう話が来たじゃないの。もう乗るッきゃ無い！って感じなんだけど、よく聞いたら金もらうのは親方で、おれは単なるゴールドマン・サックスの従業員で、時給880円だって。やってらんないでしょ。せめておれが引退して部屋を継承してから、ってお願いしたけど、現役の横綱がいるから買収するんであって、アンタが引退したら意味ないよ、年老いて死ぬまで現役でやれやゴルァ、だって。ドライだねアメちゃん企業は。早口でまくし立てながら一向に本題に入らない横綱の大きな背中は、狭いドトール店内では嫌でも注目の的になる。で、おえにどうしろっての。促すと、横綱は伏し目がちにアイスコーヒーの残りをズゴっと吸い上げ、意を決したように言った。火星に、帰ろうと思う。横綱の言葉が終わると同時に、激しい金属音が鳴り響き、日が陰る。表は、上空一面に、葉巻型の円盤が浮かんでいた。帰っちまうのかい、横綱。寂しくなるぜ。何言ってるんだ電機さん、マブダチだろ俺ら。逃げようとする首根っこをつまみ上げられ、おれは横綱と一緒に浮遊光線に捕らえられて宙に浮き、円盤に吸い込まれて行った。町には平和が戻り、横綱を失った部屋は買収の話も立ち消えになり、ほどなく潰れ、親方は吉原トルコのボーイとして、ひっそり暮らしているという。

 まだ美人枠の頃のティナとシェール。かっこいい。以後、徐々に魔物枠にシフトして行きます。。

Shame, Shame, Shame