漫画の夢を諦め、今ではタイのバンコクから北西へ200kmほど行った地方都市で、日本人ギミックの悪役ムエタイファイターとして生計を立てている渡辺電機(株)さんに、懐かしい訪問者があった。ラスタ模様のニット帽にボブマーレイのＴシャツ、麻の短パンにサンダルを履きギターを担いだ、一見典型的な旅人スタイルの手塚治虫は、渡辺電機(株)さんが差し出した手巻きのマリワナを、うまそうに吸い込んだ。キクなぁー！手っちゃん、あれからずっと旅続けてんの。渡辺電機(株)さんの問いに手塚は顔をしかめ、やめてよその呼び名。古谷のキモいマンガみたいじゃん。と、苦笑する。死んでから30年、のんびり世界を回って充電して、またそろそろ創作再開かな、なんて思ったりしてんのよ。へえ、どんなマンガよ。さわりだけ聞かせて。ねだる渡辺電機(株)さんに手塚は待ってましたと物語を語り始めたが、その言葉は次第に不明瞭になり、言葉も断片的で意味をなさず同じ言葉のループになり、その姿も夕方の薄闇の中に溶け込んで、やがて消えてしまった。死人にマリワナはダメだな。そう呟いた渡辺電機(株)さん自身も、薄闇の中で徐々にあやふやになって、溶けて行った。
テクノバンドTrioのホモっぽい人が、子役の女の子と組んで出したソロユニット…らしい。
