星になった電機さん

昨日辺りから内田百間先生の短編集「サラサーテの盤」を、30年ほど前に出た六興出版のハードカバアで讀んでゐる。この六興出版だが、出版傾向とはうらはらにバブルの頃に不動産投資に手を出し、バブル崩壊とともに自らも崩壊したのが1992年。その年の秋、當時の角川書店のお家騒動で發足したばかりのメデイアワアクスのオフイスの備品には、偶然にもこの六興出版の銘が穿たれてゐた。予算も限られた新會社、差し押さえ品流れのものを安く仕入れたのであらう。おお、と感慨深くその刻印を撫でさするおれの背後を、まだジュヴナイル作家であつた中村うさぎが奇声を發しミニスカートを翻へし、大股に歩み去つて行つた。

Land of Rape & Honey