山上先生は小説家に転身して金沢に転居してしまったが、書きたくてタマラんというよりも「文士」の暮らしに憧れていたのであろう。そんな望み通りの生活を手に入れたら、もう書くことなど無くなってしまいそうなものだが。同じようなタイプと思われる伊集院先生も、後書きを頼まれたエッセイ集を読むだけのためにワザワザ神楽坂の旅館に部屋を取る、わかりやすい文士憧れ型だが、この人はそれ以外にも「モテたい」という煩悩に支えられ、望み通りの文士の座についた今でもギラギラと獲物を狙う禽獣の眼をしておられて、大変スバラしいことだと思う。山上先生も金沢を捨てて今一度練馬に戻り、暑い中を西武線に乗って池袋へ漫画用紙を買いに行き、帰りにチカンで捕まり「順序を間違えた」と供述するような、ギラギラした暮らしに戻り、大傑作をものしてくれないものだろうか。しない。
マシン・ママ (1979年) (サンコミックス―山上たつひこ名作劇場)
- 作者: 山上たつひこ
- 出版社/メーカー: 朝日ソノラマ
- 発売日: 1979/06
- メディア: コミック
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