渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

ナニワの大霊界

かに道楽の裏口のゴミをあさって甲羅の裏に付着したミソを夢中で舐めていた渡辺電機(株)さんは、食あたりでこの世を去りました。道頓堀ではよくある光景で、誰も気に留める者はなく、川面に投げ落とされた死体は道頓堀川から木津川を経て、ゆっくりと大阪湾へ流されて行きました。カニで命を落として、今度はカニの餌になるのです。「死んだら驚いたー!」体中に食いついた無数のカニをぶら下げたまま、興奮気味に海遊館の敷地内に現れた渡辺電機(株)さんは、死後の世界を見てきた男として、主に関西のローカル番組で引っ張りだこになりました。憧れのタージンや妹尾和夫にも会えて、たいそう喜びました。けれど、もう二度とカニは口にしなかったといいます。

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Nowhereman

ウルトラセブンで、一般人の家の居間にキュラソ星人が入ってくる場面が、やたら怖くて泣いたのだが、あれなんかリアルな普通の日常にポンと異物を投げ込むことで余計怖さが増す、「スイカに塩」的な効果であろう。なので、今まさに金正男さんが暗殺されようとしているクアラルンプールの空港にキュラソ星人が出現しても、誰も驚いたり怖がったりする者は無かった。そればかりか現場を目撃してしまったが故に、キュラソ星人は北朝鮮の情報機関に命を狙われる身となってしまったのである。無国籍の身なので公的機関の保護も受けられず、キュラソ星人は浜笑マレーシア店の洗い場でバイトをしながら、追っ手の影に怯えてひっそりと暮らした。ひと思いに、ウルトラセブンが来てくれたらなァ…。クアラルンプールの夜空を見上げて、ため息をつく。こんな宇宙の果ての小さな星で、誰にも知られず一生を終えるのか…。

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ポリフェノール

チョコレートは体にいい!という最近の風潮を真に受けて、グリコポッキーを毎日むさぼり食っていた渡辺電機(株)さんはある日、芯の部分はチョコじゃない粉のかたまりなので、でぶになるのではと気付いて、その日を境に外側のチョコだけをしゃぶり取り、中の棒の部分は教室の机の中にしまうようになりました。終業式の日には、渡辺電機(株)さんの机の中はカビの生えたポッキーの芯でパンッパンになっており、担任の白鵬先生はカンカンに怒って、その場で全部食べるように命じました。食えるわけねェだろこんなもん!だいたいおれはおっさんだぞ!なんだ終業式って!誰だおめえ!離せおらぁ!怒号を張り上げて暴れていた渡辺電機(株)さんですが、やがてくぐもった悲鳴を上げながら、どこかへ連れて行かれました。こわいですね。ポッキーは、残さず食べましょう。

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マンガの神様

死んでもなお好奇心の衰えることを知らなかった手塚治虫は、三途の川でもスケッチに余念がなく、亡者の行列整理に忙しい鬼の陰茎の先端の切れ込みにGペンを刺して大怪我をさせ、閻魔大王の怒りを買い、次は最悪の転生で苦労してこいと、貧乏で才能のない漫画家としてこの世に新たな生を受けた。そう、渡辺電機(株)さんである。前世のことなど一切合切忘れ、冴えない人生を送っていた渡辺電機(株)さんが、気まぐれに吸った幻覚作用のある植物の効果で、この事実を思い出したのは、齢五十を少し過ぎた頃。燃えるような使命感と全能感に満たされ、やり残した未完の作品の続きを描くべく、かつての仕事部屋へ向かったが、すべては遅すぎた。行員たちを人質に立てこもっていた三菱東京UFJ銀行北畠支店から、武器ももたずにフラフラと出てきた渡辺電機(株)さんは、警官隊の一斉射撃でハチの巣にされ、またしても地獄へ送られた。これで懲りたやろ。もうあかんで、ちんちんに悪さしたら。陰茎の先端にGペンをぶら下げたままの鬼に優しくコツンと頭をこづかれ、バツが悪そうに舌を出して笑う、渡辺電機(株)さんだった。

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FANTASMA

かつて横綱北の富士とともに「北渡時代」を作り上げた名横綱、渡辺電機(株)さんだったが、現役を退いた後は協会にも残らず、それどころか引退相撲興行すらも行わず、相撲とスッパリ縁を切って隠遁していた。それから20年。それまでどこでどんな暮らしをしていたのか、再び表舞台に登場した彼が、かつての渡辺電機(株)さんであることに気付いた者は、殆どいなかった。その時彼は、コーネリアスと名乗っていたのである。

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北の国から

北海道の美瑛の丘の景観の美しさに心奪われたおれは、私財をはたき丘陵の見晴らしの良い草原の土地を購入した。この景色を眺めながら、ゆっくりとお迎えを待つ晩年も、悪くないじゃないか…。おれはさっそく業者を呼び、見渡す限りの草原をブルドーザーでまっ平らな更地にした。真ん中に立っていた「ケンとメリーの木」とかいう巨木を切り倒す際には、なにか変なグループがやって来て抗議活動をやらかしたが、催涙ガスで追い払った。まっ平らにならした土地をアスファルトで塗り固め、念願の昭和のキャバレーを模したギンギラギンのネオンで彩られた御殿を建設、さらに周囲に金メッキで光り輝く巨大な観音や大仏を林立させ、日夜大型スピーカーで演歌やポンチャックをガンガンに轟かせ、悠々自適の穏やかなな余生を送った。

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バトルロワイヤル

久々に水前寺清子ファンクラブの会合。会場の板橋区民センターの小会議室に着くと、すでに場内には立錐の余地もなく、200人近いチータ本人がおれを待ち構えていた。ずいぶん増えたな。さすがに年齢的にひとりで演っていくのはシンドイものがあるとの相談を受け、なら増殖させましょうと安請け合いをしたは良いが、増殖を一代で止める設定を忘れ、チータは二倍、四倍、八倍、十六倍と、日に日にモノスゴい速度で増えていったのである。こりゃ、一定数間引いて行くしかねえな。というわけで、今から皆さんに殺し合いをしてもらいます。生き残りをかけた、水前寺清子たちの壮絶なバトルが幕を開けた!

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