若貴ブームの真っ盛り、何とか人気者に気に入られてブームに便乗しようと、双方を行ったり来たりして互いの悪口を吹き込み、反応が鈍いと見るや、曙や武蔵丸にも接近してあの手この手で取り入ろうとした渡辺電機(株)さんは、貴乃花から「すき焼きでもどうです」との誘いを受け、大喜びで両手の指を鳴らしながら、指定された六本木の高級すき焼き店にスッ飛んで行ったが、個室内には若貴兄弟に曙、武蔵丸から貴ノ浪、千代大海、武双山らが勢揃いしており、渡辺電機(株)さんは土下座したまま、後頭部にすき焼きの糸こんにゃくを山盛りにされた屈辱の体勢で、何度も大声で謝罪させられた。その時の恨みを晴らす日が、やってきたぜ…。協会を離れて天涯孤独となった貴乃花に一泡吹かせてやろうと、自宅前に張り込んでいた渡辺電機(株)さんが見たものは、銀色の宇宙服に身を包み、自宅庭の空中に停止した円盤に乗り込んで、地球を去ろうとする貴乃花の姿であった。待ってくれ！おれも連れて行ってくれ！音もなく大地を離れてアンドロメダへ向かう円盤を、渡辺電機(株)さんは泣きじゃくりながら、追いかけた。
