満月の夜。池のザリガニを獲る目的で入り込んだ東京・荻窪の角川春樹邸の庭園で、渡辺電機(株)さんはハクビシン獣害対策の落とし穴にハマってもがいている処を、散歩中の角川に見つかってしまった。誰だ。表情を変えず、重々しい声で尋ねる、和服姿の角川春樹。手にしたリードの先では、首輪をつけた横綱が、獰猛な唸り声をあげて渡辺電機(株)さんを威嚇する。このままでは、殺される。死を覚悟した渡辺電機(株)さんの一世一代の大芝居。私は、神だ。神の子なる角川家長男春樹よ、今こそ時は来た。天の意志に代わりて、悪を討つが良い。荘厳な口調で紡ぎ出される渡辺電機(株)さんの言葉に、角川春樹は直立不動で涙を流しながら、父なる神よ！と絶叫し、身動きのできない渡辺電機(株)さんを抱きしめ、熱烈な接吻をした。逃げようともがく渡辺電機(株)さんの動きが次第に弱まり、二人の甘い声が聞こえ始めた月夜の庭園で、首輪をつけた横綱が一人、黙々と四股を踏み続けていた。
オーガスト・ダーネル、なんか奥崎謙三に似てる気が。コーティムンディはアラーキーっぽいですね。突然現れた自分の娘と称する女の子に、おれはパパじゃないよと困惑する男の歌です。
