漫画界広しと言えども、現役の横綱に本気で「殺してやる」と面と向かって言われたのは、おれくらいのものではないか。そう自信満々にうそぶいた次の瞬間、渡辺電機(株)さんの肉体は激怒した横綱の本気の張り手で、吹っ飛んで窓の強化ガラスを突き破り、100ｍ下の首都高速へ落下した。長距離トラックやバニラ車に次々と轢かれクッチャクチャの肉片となった渡辺電機(株)さんだが、次の日には涼しい顔で横綱の稽古場に現れ、また懲りもせずに横綱の一挙手一投足を囃し立て、誇張した物真似で弟弟子たちを爆笑の渦に包んだ。今日はどんな殺し方をされるのか。上がり座敷で親方衆が、横綱の顔が次第にどす黒く充血していくのを、固唾を呑んで見守っていた。
