渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

さよなら渡辺電機(株)さん

持ち込みに訪れた出版社で、完全に新人と同じ応対をされ、ロビーで編集者を待ちながら、唇を噛んで屈辱に身を震わせる、ベテラン作家。チクショウ、天下の渡辺電機(株)だぞ!今行きますと言ったきり、一向に降りてくる気配のない編集者を待ちながら、渡辺電機(株)さんは、ロビーで長い年月を過ごした。やがて雑誌も出版社も潰れ、跡地がコンビニになり、それも潰れて外人向けゲストハウスとなり、それも老朽化して取り壊そうかとの話が出る頃、軒下で寝泊まりしていた渡辺電機(株)さんの命もまた、最期の時を迎えていた。ボロ布のように横たわる死骸が清掃業者の手で撤去されようとしている背後で、お待たせしましたあと能天気な声を出す編集者が、キョロキョロ辺りを見回して渡辺電機(株)さんを探す姿が現実なのか幻なのか、もう渡辺電機(株)さんには分からなかった。

スティーヴ・ハーレイの短い絶頂期。口パクの当て振りとはいえ、ガムを噛みながら収録に臨む天狗っぷり。あまりの傲慢さに嫌気がさして他のメンバーは次々と脱退。パンクロックの勢いに飲み込まれて表舞台から消えるまでのカウントダウンは、もう始まっていた…。