ヨコヅナ・オーヴァードライヴ

せんせい、あたち、どうしてみんなにいじめられるろ。つぶらな瞳でそう尋ねてくる横綱白鵬の悲しげな表情に、おれも胸を締め付けられるような思いがした。あたち、みんなとおともらちになりたいろに、どうちてらろ。…それはな、おめえがウスノロのバカだからだよ！おれが冷たくそう言い放つと、横綱は泣き真似をやめ、苦みばしった笑いを浮かべた。なんだやめるのかよ、もっと可哀想な子ごっこしようぜ、電機さん。いや、アンタちっとも可哀想じゃねえから、リアリティがねえんだよな。そうかなあと苦笑する横綱の周囲には、今も同じチェック柄の制服を着たアイドルたちが群がり、競い合って横綱のひざの上に乗っている。じゃあ、交代しようか電機さん。今度はアンタが可哀想な子だ。よっしゃやるか。おれはみるみる目に涙をため、口から溢れさせたゲロを両手で受け止めて、んんー、んんー、と悲しげに声を上げた。せんせい、電機くんが吐きました！挙手して不快そうに叫ぶ横綱と、きゃあきゃあ悲鳴を上げて遠巻きに輪を作るアイドルたち。支度部屋は、今日も平和だった。

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