死の迷宮

「じゅんです！」「長作です！」「渡辺電機(株)でございます」自信満々に進み出て見栄を切ってみせた中央の男を、両脇の２人は反射的にハリセンで叩こうとして、はてこいつは渡辺電機(株)でないとしたら、どこの誰だっけ？と、まったく思い出せない自分に気付き、困惑して動きを止めてしまった。どうした。どつかなあかんやろ。舌打ちする中央の男と、ざわつき始める真っ暗な客席。おまえら、まさか自分が誰かも思い出せんのと違うやろな。言われるまでもなかった。おれたちは、どこから来て、ここで何をしているのか。自らの存在に確信を持てなくなった２人は、すでに生き物のかたちをやめてしまい、物想う立方体になって、スポットライトから外れた暗闇でぶつぶつと何事かつぶやいていた。原色のライトが明滅するステージにスモークがあふれる。全く客の姿の見えない暗闇の客席から割れんばかりの拍手を受け、渡辺電機(株)と名乗る男の歌謡ショーが、始まろうとしていた。

 実は役者のメイクと演技と映像処理でCGっぽく見せてただけというのが、泣かせますね。ワザとドットの粗い絵でデジタルっぽく見せてる絵とかあった30年前。

Paranoimia (feat. Max Headroom) [Extended Version] [2017 Remastered Version]