渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

表参道軟派ストリート

青山通りのオープンカフェで一人、目の前のアイスティーに手を付けず、物憂げに座っていた女性に声をかける。すみません、お隣よろしいですか。少し腕が太いかな、と思った、その金髪の女性がゆっくりと顔をあげると、それは女性ではなく、レスラーの高山善廣であった。いいっすよ、どうぞ。柔らかな笑みでそう言われて、もう後には引けない。ホットココアを両手でしっかり持ったままチョコンと座り、ちゅうちゅうとせわしなく吸い上げる。そんなおれをじっと見つめていた高山が、ゆっくりと口を開く。おれに話があって来たんでしょ、前田さん。誰と間違えているのか。異様な迫力に気圧され、人違いですとも言い出せないまま、おれは高山の車で両国国技館へ連れて行かれ、前田日明と称して高山とタッグを組み、リングに上がるハメになった。リングアナのコールを受け、半泣きで尻込みするおれに、高山は舌打ちして先鋒を買って出た。心細い思いでコーナーから満員の会場を見渡すと、鬼の形相で花道をこちらへ向かってくる本物の前田の姿が、はっきりと見て取れた。

レコードデビュー前が全盛期だったとの説を裏付ける、スバラしいパフォーマンス。夢のようだ。

Turns On Volume 1

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