突然のゲリラ豪雨に見舞われ、慌てて駆け込んだ神社の祠の中には、先客がいた。うふふふと妖艶に笑うその若い女は、雨に濡れたワンピース越しに豊満な肉体を見せつけながら、お仕事何してらっしゃるの、などと言って身体をすり寄せてきた。横綱、冗談やめてくださいよ。おれの迷惑そうな声にチェッとつまらなそうに舌打ちし、女装した白鵬は肩を怒らせブツブツ何事かボヤキながら、鳥居を抜けて雨の中を去って行った。遠ざかって行く雪駄の音が止まり、突然のブレーキ音と激しい衝突音が鳴り響いた。呆然と鳥居の向こうの気配に耳をそばだてていると、人々のざわめきやクラクションが静まるにつれ、静かな雨音の中で、ボヤキの続きと雪駄の音が再び遠ざかって行くのが、わかった。