渡辺電機(株)

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日本サッカー興亡史

なンだよ!おれが青春18きっぷ使ったらいけねえのかよ!声を荒げる金髪の中年男性はまぎれもなく、あのサッカー界の至宝・三浦知良選手だった。てめえJリーガーなめてんのか!いやお客さんJリーガーとか関係なくね、これ去年の使用済みのやつでしょ。運転士の、低く抑揚のない声。知らねえよおらぁ!んだよ離せよ!只見線の森に囲まれた閑静な無人駅に響く、巻き舌の怒声。ワンマン車の運転士に突き飛ばされ、雑草混じりのホームに転げ落ちた三浦選手が何か言う間もなく、ドアが閉められた。音もなく小雨の降る中、車両はゆっくりと会津川口方面へと動き出した。くっそ覚えてろよ。高級そうなコートについた砂を払い落としながら起き上がった三浦選手の前に、3人の男が立っていた。百姓か人足か、屈強な体格で裾をからげ、傘を目深に被り頬かむりをした男たちは、低い声を揃えて、奇妙な節回しの唄を歌っていた。♪よいさのまかしょ、えんやこらまかせ。なんだこいつら?困惑する三浦選手を軽々と担ぎ上げた3人は、なおも歌いながら、ずんずんと森の中へあるき出した。♪よいさのまかしょ、えんやこらまかせ。おい待ってくれ!おろしてくれ!三浦選手の悲鳴と3人の歌声が、森の奥深くへ遠ざかって行った。

BANG!

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