そういえば20何年やってて、ウチまで原稿とりに来た編集者って殆どいねえのではないか。少年キャプテンのＳ木さん以外に思い出せんな。おれが編集部まで届けるか、駅前のサ店でというのが多かった。Ｓ木さん、なんでおれんちまで来てたんだろう。特におれに興味がある風でもなく、淡々と来て、話にも加わらず黙々と文庫本を読み、原稿を受け取ってササッと帰って行った。自宅プロバイダ事業を始めるとかで退社したと聞いたが、最近なぜか角川で編集をやっていると知った。顔はヘビそっくりというよりヘビそのもので、ウロコに覆われチロチロと舌を出し、たまにネズミをくわえたまま来ることがあったが、特に興味もないのでワケは聞かなかった。今は脱皮を繰り返し、だいぶ人間に近づいたらしい。
