追悼になってない追悼。

村野守美先生のアシスタントを１週間だけ務めたのは1990年暮れのことで、月刊コミックコンプで「クソゲー戦記」の掲載が決まる直前だった。そこで経験した出来事の数々は、オレの心に一生消えない大きな爪痕を残しているのだが、上機嫌な時に話してくれる数々の業界エピソードは、天才ならではの脚色が加わって絶品の面白さだった。若き日の本宮ひろ志や大友克洋がしでかした珍騒動、谷岡ヤスジとの交流etc...。中でも笑ったのが虫プロ時代の想い出話。治虫先生の子息・真ちゃんがアニメーションの作画スタジオに我が物顔に出入りして、ちょっとしたデッサン狂いやディテールの違いに難癖をつけては「ボク天才！」と得意満面で、疲労困憊のスタッフたちの鬱憤はたまるばかり。ついにブチ切れた後の麻雀劇画の巨匠Ｋ氏が、おもむろに背後から真ちゃんを小脇に抱えるとスタジオの中庭へダッシュ、真ちゃんを池に放り込んだという。お手伝いさんに助けられズブ濡れで号泣する真ちゃんをよそに、作業は黙々と進んで行くのだった…。真偽のほどは知りません。あと、先生の語り口はもっと面白かったです。ありがとうございました。

垣根の魔女 上 (ビッグコミックス ワイド版)