15、6年前。アシスタントと二人で神保町を歩いていて、「漫画家めざすんやったら、もっと本読まなあかんやろ」という話をしたら、アシの人はムッとして東京堂のショーケースに飾られた「先週のベストセラー10冊」を指差し、「じゃあこの中の本、どんだけ読みました？」と言い返して来た。以来、オレはベストセラーが大嫌いになり、なるべく売れるマンガを描かないように細心の注意を払って来た結果、こんな大雪山麓の山小屋で薪を割りながら人知れず晩年を迎えようとしている。アシは、パリで売れっ子空間コーディネーターとして活躍していると、風の便りに聞いた。
