渡辺電機(株)

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裁判長! ここは死刑でどうですか

ドイツのHölderlinといえば、サイケデリック・フォークの至宝と言われるファースト「ヘルダーリンの夢」があまりにも有名だが、実際に聴いてみると、浮世離れを気取る割には妙に歌謡曲的な下世話さに当惑を覚えるのも事実。引き合いに出される同時代の他のバンドたち、既に宗教的にイっちゃってる感が顕著なPopol Vuh、シャレの通じなさそうな生真面目さが恐ろしいEmtidi、後のくされブルースロック化が信じられない奇跡的なBröselmaschine、彼らのデビュー作と比べて、余りにも凡庸でわかりやすい。当時の映像に残るマヌケな笑顔から察するに、コミューンとかフリーセックスとか寝言を並べてグルーピーを集め、楽しくやっていたのであろう。業界入りして大人になったのか、2作目以降は急速に通俗的なシンフォニックに装いを変えて行くが、すると逆に通俗的な枠組みの中で、彼らのイビツな個性が輝き始めるから、面白いものである。弾むようなエレピと、脳にこすりつけて来るように鳴り響くチェロと管楽器がつづる、たどたどしく奇妙な節回しは、聴けば聴くほどクセになる。というわけで、実はあんまり至宝とも思えない1枚めは後回しにして(だいたい想像通りだし)、2〜4枚め辺りから聴いてみた方が面白いと思います。サビがあるんだか無いんだか、盛り上がるんだか上がらないんだか、よくわからないままキモチいい、なんとも変な可愛らしい音楽です。

Hoelderlin

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