渡辺電機(株)

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かかか帰れ

Zeus B.Held - Amusement(1978)
「ドイツで2番目に偉大なバンド」を自称したBirth Control(1番目が誰かは不明)の元シンセ奏者の、最初のソロアルバム。全体的には「リード楽器がシンセ」というだけの中途半端なポップロックで、ジャズやクラシックの素養を随所に垣間見せるものの、バンドで見せた冴えは無い。ペリキン風味のビートルズカバーThe Fool on the hillで幕を開け、以後もなんだか煮え切らないモコモコした音が続く。同じ年にコニーズスタジオでSystems of Romanceが録られ、日本ではYMOも始動していたことを考えれば、本作が歴史の彼方に消えたのも納得行くが、時おり聴かせるポップなハーモニーにはそれなりにひらめきを感じる。当時のシンセ奏者のアルバムというと、人力では不可能なシーケンス機能を利してハッタリをかました「スペイシー」ものと相場が決まっていたが、逆にここまで腰の低い音も珍しい。
Birth Controlと言えば、ポルノ映画で強姦魔集団を演じるなど「セックスバンド」と批判された、脳の代わりに頭に精巣が詰まってそうなマッチョバンドだったが、4作目でZeusが加入してインテリジェンスを注入すると、あっというまにプログレバンドに変身してしまった。ライヴ含め5枚のアルバムで活躍、1977年のIncreaseではアフリカンなビートと奇妙な和音でプログレの類型から大きく逸脱してみせたが、直後に脱退。バンドは一瞬で元のゴリゴリのマッチョサウンドに戻るのだった。
この次のアルバムは日本でも発売されたが,下の動画の通りやっぱり冴えなくて売れず、以後は海を渡って英国でプロデュース業に専念。ジョン・フォックスデッド・オア・アライヴでいい仕事をして、晴れてビッグネームの仲間入りを果たす。本作でもその萌芽が感じられる器用にまとめたテクノポップが十八番で、ファッションやアルファヴィル、メン・ウィズアウト・ハットなどのB級エレポップで手堅く小金を貯めた。90年代以降はドイツに帰り、角が取れて丸くなったニナ・ハーゲンなどを手がけつつ、趣味で自分のバンドもやって、なかなかいい余生を送っているようです。

と、こんな所に書いても誰も読まないのだが、他に感想を書く機会もないのでまとめておく。
朝4時前に起きたので眠いです。