渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

愛に関する十二章

イベンダー・ホリフィールドの耳を噛みちぎって失格処分となったマイク・タイソンは、失意の内にリングを去り、真実の愛を求めてパリへと旅立った。名もないカフェーでアルバイトをしながら、パリの人々との触れ合いに心の傷を癒やすタイソンだが、渡辺電機(株)さんの放った機械忍者軍団が、容赦なく迫る。愛するパリの街と恋人イヴォンヌを守るため、再びグローブを手にしたタイソン。だが、晩秋のシャンゼリゼ通りで勧誘されセールストークに乗せられて買ったラッセンの絵を通じて、渡辺電機(株)さんとの間に友情が芽生えた。二人はがっちりスクラムを組んで、一世一代の情報商材ビジネスにチャレンジするのだった。札束風呂で美女に挟まれて笑う二人の写真を、誰しも一度は雑誌の広告で目にしたことがあるだろう。挑戦なくして、サクセスなし。さあ、貴方もネットワークビジネスの勝者になりましょう。

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包丁無宿

カニクイザルに襲われ脳みそを齧られた渡辺電機(株)さんだったが、転んでもタダでは起きない。食われて欠けた脳みそで、考えた。カニクイザルに食われるっつー事は、おれの脳みそ、カニの味がすんじゃね?思い立ったら行動は早い。大鍋に煮立たせた熱湯に自らの頭を突っ込み、茹で上がったところでサッと冷水にくぐらせ、頭の殻を木槌でコツンと叩き割ってプルプルの脳みそを取り出し、おろしポン酢で召し上がったが、一番美味しいところは既にカニクイザルに食われており、悔し涙に暮れたという。脳みそも失って以後は定職につくことも叶わず辛酸をなめたが、不思議と後悔はなかった。

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起業チャレンジ成功の秘訣

人魚を食べて不老不死となった八百比丘尼の話をどう勘違いしたのか、カッパの肉を食べて不老不死に!と宣言して、カッパ狩りのため長良川をカヌーで上って行った渡辺電機(株)さんが消息を絶って、3ヶ月。社会からつまはじきにされた落ちこぼれゆえ、捜索願いが出されることもなく忘れられたが、カッパの国で興したネットワークビジネスが大当たり、巨万の富を得て時代の寵児となった。だが有名人の哀しさ、常に注目を浴び、街に出ればサインを求められ、ガードマンに守られる日々に忙殺され、念願のカッパの肉を食する機会についに恵まれないまま、失意の内にカッパの国に別れを告げ、凱旋帰国した。カッパの国の通貨は日本では何の価値もなく大便の山として処理され、その莫大な費用を支払うためにユーチューバーとして昼夜を問わず働き続け、過労のため若くして死んだ。まだ97歳だったという。

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メデューサの子ら

覚悟完了ッ!!そう絶叫して服を脱ぎ捨て全裸になると、渡辺電機(株)さんは「アベ政治を許さない」のプラカードを手に、結びの一番を前にスタンバイした呼び出しを押しのけ、ふるちんで土俵に駆け上がった。だが、その足が土俵を踏むことはなく、宙に浮いたままの渡辺電機(株)さんの身体は、会場警備の陰茎山親方(元関脇貴闘力)に軽々とつまみ上げられたまま、花道を支度部屋へと運ばれて行った。何しやがる離せッこんちくしょうめ!手足をじたばたさせながら悪態をつく渡辺電機(株)さんだが、親方の軽いデコピン一発で手足をぐにゃりと下ろし、動かなくなった。渡辺電機(株)さんは気絶したまま雨の両国の街へ放り出され、何台もの車に轢かれて小さな肉片となって下水に流されて行ったが、彼の残したプラカードが、結びの一番で場内を舞った座布団の嵐にまぎれて横綱の側頭部を強打した。一命はとりとめたものの、横綱は物心ついて以降の記憶を一切失って、心は4歳の幼児のまま、渡辺電機(株)さんに会いたいと日々泣きじゃくっているという。

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北の狼 南の虎

大嫌いなブロッコリーとニンジンが山盛りでグツグツ煮える大鍋を前に、ベソをかく横綱。食べなさいッ!激しく叱責する渡辺電機(株)さんも、内心は可哀想で胸が張り裂けそうだった。すまん横綱、強くなるためだ。せめて、苦手な牛乳にはハチミツを入れて甘くしてやるから…。目頭が熱くなるのを堪え、さらにゲキを飛ばす。ほらっ横綱!おっきくなれないよ!その頃ライバルの稀勢の里は、四つん這いにさせた付け人の背中に置いた巨大なベーコンのブロックにジャックナイフを突き立て、コニャックをラッパ飲みしながら、女装させた高安の土俵ストリップを悠然と眺めていた。相撲はな、勝ちゃいいんだよ、勝ちゃあ…。この正反対のライフスタイルを送る両横綱が、やがて力を合わせ安倍政権を倒す日が、やって来ようとは…。

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ひとりぼっちのあいつ

爆風スランプのボーカル、ライムスターの坊主、そして渡辺電機(株)さんが三人並ぶと、もう全く見分けがつかなくなってしまい、おれがあいつであいつがおれでと侃侃諤諤の激しい言葉の応酬は醜いつかみ合いに発展し、三人がもつれ合って階段を転げ落ちた拍子に人格が入れ替わり、ライムスターの人は急に軽快に投資の話を始め、爆風スランプの人はプリプリ怒りながら映画の話を始めたが、渡辺電機(株)さんにだけは何も起きず、仲間外れにされたことを悟ってめそめそ泣き出してしまったが、誰も気に止める者はなく、三人を乗せた旅客機は、NYの世界貿易センタービルへと真っ直ぐに近づいて行った。

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鋼鉄都市

「うんこ食べ放題!」の看板を前に、これは得なのか損なのか、真剣な面持ちで考え込んでいる渡辺電機(株)さんこそが、本当の馬鹿であることに疑いの余地はなかったが、そんな馬鹿でも一票の重みは平等だ。我が党に清き一票を!いやいや、ぜひ我が党に!渡辺電機(株)さんの前で土下座して投票を乞う、自民党安倍総裁と、社会党土井たか子委員長。ん〜〜〜、どっちにしようかね…。残酷な笑みを浮かべ二人を見比べていた渡辺電機(株)さんが、やがてポンと手をたたき、提案した。うんこだ。どっちか、長いうんこをした方に投票するぜ。政策なんか知ったことか、おれにもうんこ一筋五十余年の男の意地があンだよ!思わず顔を見合わせた安倍氏と土井氏だったがやがて、ウフフ…アハハハ…、どちらともなく笑い始めた。な…なにが可笑しいンでィッ!!いきり立つ渡辺電機(株)さんに、総理は笑いながらネクタイを外し、電機さんね、私たちもう、うんこしないんですよ。そう言ってシャツの前を開けると、チタンの外骨格の表面を彩る無数のランプがチカチカまたたき、静かなモーター音を上げるのが分かった。とっくに我々機械ニンゲンの世界になってるんですよ、電機さん。さあ、我々の仲間におなりなさい。さあ。

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