渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

砂の器

カニでもどうだい電機さん、との横綱の誘いにホイホイついて行き、ご丁寧に持ち帰り用のタッパーまで用意した渡辺電機(株)さんだったが、幼稚園の砂場で真っ黒になって砂を掘り起こし、ヨツアナカシパンを探し当てて歓声をあげバリバリと噛み砕く横綱の姿に、呆然と立ちすくんだ。と、ここまで書いて、昭和の頃ならいざ知らず、今の砂場にヨツアナカシパンなんて混じってんのかね?と、モヤモヤ気になり出したらもう止まらない。万年筆を置いて、松本清張は家内を呼んだ。ヲイ、出掛けるよ。いつもならば打てば響くやうに返へつてくる妻の聲が、ない。まさか、台処に侵入したヱツチな黒人に、犯されてゐるのでは。心配でたまらなくなり、威嚇用に黒の皮ヂヤンと倫敦ブウツを装着すると、暗く長い廊下を台処へと急いだが、走つても走つても躰は前へ進まず、台処の灯りは暗闇の向かうへ遠ざかつて行つた。

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子を連れて

モスクワ五輪の選手選考を兼ねた、1979年東京国際マラソン。終盤、国立競技場に入るや猛然とスパートして首位を独走する瀬古利彦に、懸命に追いすがる宗茂、宗猛の兄弟、さらに背後から泣きわめきながら青龍刀を振り回して迫る渡辺電機(株)さん。また、いじめられたのだ。あと半周に差し掛かったバックストレートで青龍刀の切っ先が届いたのか、茂、猛の順に相次いで生首が宙を舞い、首を失った身体はそのまま走り続け、カーブを曲がらず直進して客席に踊りこんで行った。あとはもう、本能の赴くまま陰茎丸出しの大暴れ。背後の騒ぎを察して、恐怖に顔を歪めて懸命に逃げる瀬古の足が、最後のストレートでにわかに鈍る。血まみれの青竜刀を構えてぐんぐん迫る渡辺電機(株)さんは、もう泣いてはいなかった。あまりの恐ろしさに泣き出した瀬古の身体はどんどん縮んでいき、ゴール前ではヨチヨチ歩きの幼児になってしまい、ゴールすることなく寝転んで、元気に泣き続けた。渡辺電機(株)さんは無言で赤子を抱き上げると青龍刀を捨て、あやしながらそのまま競技場を後にした。その子を横綱と名付け、我が子同然に慈しみ育てたという。やがて最大の敵になることは分かっていたが、そんなことはどうでも良かった。結局、翌年のモスクワ五輪に日本選手団は派遣されなかった。

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オレたちひょうきん族

ビートたけし、ビートでんきの二人組、ツービートはアッという間に成功の階段を駆け上り天下を獲ったが、その座を手放すのも早かった。トントン拍子に出世して、ついに掴んだ日曜夜のゴールデンタイムの冠番組「ツービートのばんざい!ポルノ君」の第一回の生放送で、調子に乗ったでんきが天皇陛下のゴムマスクを被って横澤ディレクターの顔面にまたがり放尿、即刻放映中止で打ち切りとなった。フジテレビどころかテレビ界を永久追放された2人は、啖呵を切って飛び出した浅草にも今さら戻れず、コンビは自然消滅とあいなった。でんきは以後も放尿や脱糞を繰り返す漫画家として細々と活動を続けたが、たけしは心を病み、自分がお笑い界の頂点に立ち、軍団を率いて芸能界を牛耳っているかの如き妄想に取り憑かれて行った。それから数年後、でんきが荻窪駅前で爆死した後も、たけしは上野駅の地下道で餓死するまで、心の中ではタレントたちから「殿」と崇められる大物芸人であり続けたという。

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殺戮!阿寒湖空中戦

釧路駅前から乗ったバスの乗客は大半が空港で降りてしまい、いつしか客席には横綱ただ一人になっていた。車窓を流れる景色は白いガスに覆われ、バスがどんどん山の中へ進んでいることが、分かった。本当にこんな所に、渡辺電機(株)さんが隠れているのか。訝しんで、太い指で窓ガラスのくもりを拭った横綱の目に飛び込んできたのは、雪の残る茂みで、タンチョウヅルに混じって一心不乱に地面に落ちた木の実を漁る、全裸の渡辺電機(株)さんの姿だった。あの花形2ちゃんねらーの地位を捨てて、こんなケダモノじみた暮らしに…!運転手を片手で縊り殺してバスを停め、駆け寄った横綱に、渡辺電機(株)さんの指令の下、極めて統制のとれたフォーメーションを組んだ殺人タンチョウ軍団が、冷たい風を切って襲い掛かる!そのとき。横綱の気合いのこもった四股一閃、高熱の波動がタンチョウ軍団を襲い、瞬時に丸焼きのフライドチキンと化した。ぼとぼと落ちる黒焦げのフライドチキンを振り払い、焦がし過ぎだぜ横綱、まだまだだな!と、高笑いとともに空中に舞う渡辺電機(株)さん。最後の決戦が始まった!と思ったら近所のアイヌに通報され、数分後には交番で説諭を食らい、仲良く並んでべそをかいていたと言う…。

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県警対組織暴力

「取調室でオゴってくれるカツ丼食べ比べツアー!どこの警察署が一番ンマい?」というブログ企画で、渡辺電機(株)さんがまず最初に訪れた近所の杉並警察署で、ちんぽを出して歩きましたと申告して自首した数分後には、地下二階の拷問室で拘束された全裸の体中を這い回る数十匹のオポッサムに、カン高い嬌声を上げていた。今日はこのくらいで堪忍しちゃるけえ、二度となめたマネせんとけや、のう。頭にオポッサムを乗せた菅原文太に肩を叩かれ、スゴスゴと出てきた渡辺電機(株)さんを、オポッサムの着ぐるみを着た横綱が出迎え、無言で優しく抱きしめる。横綱の腕の中で泣きじゃくる渡辺電機(株)さんに肩をすくめ「見ちゃおれんわい」と呟いた菅原文太の頭上から、オポッサムの尿が滝のように降り注いだ。

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学ラン青春

再結成後、初のスタジオアルバムがついに発売となるイエロー・マジック・オーケストラの記者会見で、全裸でうなだれ顔面が腫れ上がったメンバー3人を差し置いて、真ん中に座ってふんぞり返る渡辺電機(株)さんを、報道陣は困惑して見守り、言葉を待った。こいつら今日から、おれの舎弟。背後の3人をアゴで指し示して、渡辺電機(株)さんは学帽のひさしを親指でグイとあげると、この学園、今日からこの渡辺電機(株)さまが仕切らせてもらうぜ!と、咆哮した。恐怖の番長の登場にすくみ上った報道陣だったが、ここが学園ではないこと、YMOのメンバーが番長ではないことを説明すると渡辺電機(株)さんは納得し、素直に非礼と暴力を詫び、治療費の肩代わりを申し出たが、会見を台無しにした代償はあまりに重く、巨額の賠償金を支払うため、残りの人生を棒に振った。 続きを読む

君の名は。

新銀行東京や首都大学など、石原慎太郎元知事が付けた名称が次々と改名されて行く流れは止まらず、ついに息子の石原伸晃は石原じろう、石原良純は石原とんぼ、石原宏高は石原ノイバウテンと改名させられた。誰の仕業なのか。実行者を突き止めるべく、難を逃れた四男の石原延啓が、相棒の渡辺電機(株)さんとともに、夜の帝都を駆ける!だが、敵は身近にいたのだった…。底なし沼から脱出しようともがく延啓を嘲笑し夜空へと舞った渡辺電機(株)さんだが、その時すでに何者かの手によって、その名を「渡辺のん」に改名させられていたのである。真の敵は、いったい何者なのか…。

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