渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

幻化

押すなよ!絶対押すなよ!阿蘇山のマグマが煮え立つ火口を覗き込みながら、背後に声をかける渡辺電機(株)さん。だが、後ろに張り付いた唐十郎の不穏なニヤニヤ笑いが、渡辺電機(株)さんの運命を物語っていた。享年20歳。火口の淵からマグマの中へ落ちて行く間に見た長い長い走馬灯の中で、渡辺電機(株)さんは漫画家となり、横綱と友情を結び、幾度も世界の終末を見た。唐十郎が芥川賞を受賞する、数日前のことだった。

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暮らしのヒント

お醤油を分けて下さい…。おたまを持って勝手口に現れた隣の奥さんは、どう見ても横綱の変装であったが、渡辺電機(株)さんは黙って醤油のビンを差し出した。好きなだけお使いなさい。すみませんすみませんと言いながらラッパ飲みする大きな背中が、物悲しい。醤油を飲み干してもまだモジモジその場を立ち去らない横綱に、渡辺電機(株)さんはとうとうしびれを切らし、あんまり相撲ファンをがっかりさせないでほしいんだけどな!と声を荒げる。なんだ、バレてんのかよ。急に不敵な笑いを浮かべると、横綱は髢を脱ぎ捨て、勝手に冷蔵庫を漁りだした。とにかく食わねえとさ、稽古にも身が入らねえんだよ。などと、夜の作業のおともにとってあったマドレーヌを食われてしまい、憤激した渡辺電機(株)さんが猟銃を持ち出すと、横綱はケーンと甲高い声で鳴き、窓の隙間から飛び出して森の中へ逃げ込んでしまった。まあいい、本場所の土俵で捕まえればいいこった。生かしちゃおかねえ…。5月の東京。不穏な夏場所が、始まろうとしていた。

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世界に捧ぐ

わが身に起こっている事を現実と信じられないまま、オヤジ狩りの少年たちに捕らえられ、身体に鎖を巻きつけて隅田川に放り込まれた渡辺電機(株)さん。足をバタバタさせながら見上げる、だんだん遠ざかって行く水面の光は、今でも夢に出るという。そう、彼は死ななかった。幼少時から何かにつけ、お前は本当はカッパの子供だったんだよと親に言われていたのが、まさか真実だったとは。そう、おれは人間じゃなかったケロよ!人間の尻子玉を抜いて復讐するケロ!そう言って陸に上がって来た渡辺電機(株)さんを相撲で打ち倒したのが、元東京都知事の舛添要一氏であった。知事のイスを追われた後も、人知れず帝都の平和のために尊い汗を流す舛添氏こそが、末世を救う真の救世主となるのだ!バンザーイだ!

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リーサルウェポン

力士と漫画家の合コンで、すき焼きの肉を一瞬で力士に食われてしまった恨みを、渡辺電機(株)さんは決して忘れなかった。彼の発案で東京都で施行された有害力士規制条例により、多くの力士が、二度と都内の土を踏めなくなってしまった。そんなら、力士でなくなればエエだけの話や。ワイはもう単なる、身体のデカいモンゴル人や…。そう言って髷を切り、渡辺電機(株)さんを殺しに現れた横綱だが、それでもなお力士のプライドは忘れず、改造手術で全身殺人兵器と化し人間の心も失った渡辺電機(株)さんに対し、あくまで素手で武器を持たずに立ち向かい、勇敢に散って行ったと言う…。

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ノーベル殺人賞

ドギツい下ネタ四コマで鳴らした渡辺電機(株)さんも、今では改心して、純潔教育の推進のために、女色に耽ったり、自慰を覚えて勉学が疎かになった者が天罰を受け、無残な最期を遂げる漫画を描いて評価を高め、遂には国から勲章を授与されるまでになった。裏切りやがって、殺してやる!かつて仲良くちんぽ丸出しで暴れまわった元横綱、今では無職の宿無し大男。渡辺電機(株)さんの鋭い告発により、土俵を追われた男が、復讐の機会をうかがって、勲章授与の式典会場の前に現れ、全裸になった。全身が紫色にペイントされ、手には最新号のレモンピープル。やっぱり、来やがったな。リムジンから降り立った渡辺電機(株)さんも目ざとく元横綱を見つけ、ニヤリと笑い、燕尾服を脱ぎ捨てた。全身が緑色にペイントされている。勲章より、てめえとの決着が先のようだな。トウッ!その手にしたエロ本が何なのか元横綱が見定める前に、激しく激突の火花が散った。核をも凌駕する、高エネルギーの爆発。またひとつ、文明が滅びるのか…。

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100メガショック!

餓狼伝説のテリーって、ありゃオレがモデルなんよ。常に酔っ払って鼻を赤くした小柄な寝小便垂れの中年男、渡辺電機(株)さんのホラ吹きが、また始まった。いつものように、一斉によってたかって吊るし上げようと取り囲んだホームレス仲間たちが、渡辺電機(株)さんの繰り出す拳で次々と吹っ飛んで行く。あ、あンたいったい…?最後に残ったホームレスのリーダー格の大男が、薄汚れたオーバーオールの上に手に持ったおにぎりの米粒をポロポロとこぼしながら、震えている。今までよくもさんざん苛めてくれたな、おい。トゥッ!死を覚悟して目をつむった大男の目の前で、拳は止まった。だが、あンたは殺さねえ。ど、どうして…?地べたに座り込んで失禁しながら、大男はおどおどと渡辺電機(株)さんを見上げた。知ってるぜ、オマエむかし壇蜜って名乗って女優演ってただろ。そう言って、渡辺電機(株)さんははにかむように鼻をこする。おれ、あンたのファンだったんだ。何度コイたか、わかんねえ。いや、おれ女じゃねえし…。言いかけて、命には換えられないことに気付いた大男は、黙って頷いた。殴り殺されるよりゃ、マシか。残りの人生を、元壇蜜のホームレスとして過ごすことになったとしても…。嘘で塗り固めた長く惨めな余生が、始まった。

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マネーの虎 サクセスの狼

カリスマトレーダーを名乗り、投資セミナーや会員制有料メルマガなどでエゲツないカネ集めをして批判を浴びた渡辺電機(株)さんだが、実はその金で恵まれない子供たちのために公園を作ろうとしていることを聞かされた横綱は感動し、一肌脱ぐことを快諾した。だから、その好意を踏みにじって渡辺電機(株)さんが横綱をセミナーの広告塔に使って、力士や親方衆から金を集め、クルーザーやビスコの購入資金に充てていると知った時の横綱の怒りは、凄まじいものだった。地球は焦土と化し、人類は死に絶え、地上には横綱と渡辺電機(株)さんと、舛添要一氏の3人だけが生き残った。なんでオレが…。当惑する舛添氏をよそに、バッタのように逃げ回る渡辺電機(株)さんを、横綱はいつまでも追いかけ回した。

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