渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

折々の言葉

「クリリンのことかー」だの「何をするだアー」だの「マジ童貞ー」だの「三銃士を連れてきたよ」だの、マンガもネットも見ない木こり一筋50年のおれには、何のことだかさっぱりわからん。仲間内のくだらねえ隠語ではしゃぎやがって!そう言って男たちの首を斧で刈り取ると、渡辺電機(株)さんはポンギでパイオツカイデーでパツキンのチャンネーをパーナンしてザギンでグーフーとシースーと洒落込んだのだった。金はなく、袋叩きにされ死んだ。

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破廉恥學園

メンヘラと天プラは似ていますね。たしかに!衣はサクサク、中身はジューシー、美味しいよねメンヘラ!いや、おれは語感の話をさ…。言いかけて、このパンチドランカーに何を言ってもムダだなと思いとどまり、メンヘラのポーズ!などと叫んで奇怪なヨガのポーズを取り顔面を歪ませる鶴太郎を、おれは悲しい気持ちで見た。お笑いに行き詰まりボクシングに心血を注いだあの日々、鬼塚勝也のサンドバッグを買って出たあの日々の中で、おれたちの鶴ちゃんは静かに壊れて行っていたのだ。鶴さん、プッツン5の収録の時間です。声をかけると、鶴太郎は勢い良く立ち上がり、片岡上等兵、日テレにまいります!と、おどけた仕草で敬礼し、黒いブリーフ一丁のまま、窓ガラスを突き破って表に飛び出して行った。

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事件記者ポンチャック

どうしても喋りたくねえってんなら仕方ねえ。コイツを使わせてもらうぜ。渡辺電機(株)さんの手に、注射器が冷たく光る。なにしろ、滅多なことじゃ手に入らねえハクネタだ!意地でも吐かせてやるぜ。そう言って、口をへの字に結んだまま震えている川端康成の二の腕をつかむと、容赦なく針を突き刺した。さあ言えッ!トンネルを抜けると何があったンだ?……見えない。まっしろだ。何も見えない。オイッしらばっくれるな!そこがどこだか分かるだろう?…わからない。真っ白な雪の世界。さむい、さむいよ。興ちゃん…。クチビルを紫色にして倒れ込み、誰かの名前を口走ったかと思うと、そのまま死んでしまった。チッ、無駄骨かよ。しかし、誰だ興ちゃんてェのは…。川端の亡骸は、驚くほど軽かった。襟首を掴んでつまみ上げ、燃えるゴミに出そうと表に出ると、その「興ちゃん」が両手にバンテージを巻き、シャドウボクシングをしながらおれを待っていた。おう、川端先生にえらい真似さらしてくれたのう。この昭和の文豪と亀田一家の間にどんな因縁があったのかを確かめようにも、どうやらおれの命運も、ここまでのようだ…。

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夜明けの口笛吹き

平成初期の国政選挙に吹き荒れたマドンナ旋風、その次に来るのはプリンス旋風に違いないと読み、金の巻き毛のカツラをかぶり、白いタイツを履いて腰にサーベルを差し、紅いマントをヒラヒラさせながら政見放送に臨んだ渡辺電機(株)さんは、それなりに有権者の記憶に爪痕を残しはしたが、法定得票数にも達せずなけなしの供託金を没収され、当選後の利権をあてこんで背負った莫大な借金を返済するために、黒部峡谷奥地の採石場で住み込みで働き、四十代なかばで肺を病んで生涯を終えるまで、王子の扮装を解くことは一度もなく、現場の人々に王子様と呼ばれ親しまれたという。

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死への舞踏やってみるかい

てめーはおれを怒らせた!言い終わらないうちに、渡辺電機(株)さんの身体は一回転して弾け跳んだ。鼻血をウズマキ状に噴射しながら宙を舞い、会議室の隅に落ちて、動かなくなった。貴乃花理事への仕打ちに怒って、相撲協会の理事会に飛び込んだはいいが、カン高い声で喚き散らすのを八角理事長に優しく諌められ、逆上した渡辺電機(株)さんが指を突きつけて威嚇した途端の、理事長からの鉄拳である。と言っても、通常の成人男性ならくすぐったいと思う程度の軽いデコピンであったが、渡辺電機(株)さんの虚弱さは、人々の想像を超えた。後遺症で四肢と言語機能に重い障害を背負った渡辺電機(株)さんに対し、一ヶ月おやつ無しを言い渡された八角理事長や、午後11時以降のオナニーを禁じられた貴乃花元理事らへの処分は、あまりにも軽い。開かれた組織への改革は、まだまだ途上にあるといえよう。

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無国籍ロマンス

たーらこー!たーらこー!何やら懐かしい歌を絶叫しながら、薄汚れた巨大なテディベア人形を抱いて街をさまよう、ふんどし一丁の中年男。なあ若いの、将来こんなふうになりたくないだろう?でも、なるんだよ。そう言ってニターッと笑い、ヨダレを拭くと、また高らかに歌を絶叫しながら、フラフラとどこかへ行ってしまった。こんな毎日を送りながらも、渡辺電機(株)さんは月2回の〆切はキッチリ守り、読者のみならず政財界の重鎮にも広く愛され、しばしば意見を求められることもあったという。生きていれば120歳を超えているはずだが、どうしているのか…。

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日本沈没

袋に「増量中!」と書かれていたので大喜びでフルグラを買って家に帰って開けようとしたら、イキナリ玄関をブチ破ってアフリカゾウが入ってきて、おれの頭上から滝のようにションベンを降らせた。「増量中」と書いてあると思ったそれは、よく見たら「象尿中」の読み間違いであった。コイツは一本取られたよワッハッハと笑ってる内が華で、ションベンは一向に止まる気配がなく、家は押し流され象も溺れて姿が見えなくなり、あふれるションベンにこの国は沈んだ。人々は避難したが、田所博士と渡老人だけは残り、美しい日本列島と運命を共にした。

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