渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

ヨイトマケの唄

この金髪ブタ野郎が言うには、おれは天草四郎の生まれ変わりだっつうじゃないの!マジわかってる!こいつは信用できるね。得意満面で吹聴する渡辺電機(株)さんの話を聞く内に、その全身黄色の女装老人はわなわなと全身を震わせて、厚化粧の白い顔を憤怒の形相に変えた。ちょっとあなた、失礼でしょう。天草四郎の生まれ変わりは、この私よ。ねえそうでしょう、江原さん。板挟みになり、笑顔を凍りつかせたまま絶句する霊能者は、ひん、と小さく啼いたかと思うと、静かにその場で失禁を始めた。高級な和服にみるみる染みが広がり、濃厚な尿臭が立ち込める。こりゃ、相撲で決着着けるしかねえようだな。おれがポツリと言うと、黄色い老人はニヤリと笑い、先ほどとは一変した野太い声で答えた。その言葉、待ってたよ電機さん。ああ結局、今日も横綱に半殺しにされるんや…。

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ハレンチ大作戦

喪中につき新年のご挨拶をご遠慮させていただきます!そう絶叫して差し入れのカレーにかぶりついた渡辺電機(株)さんに、なんでもかんでも「いただきます」の頭につければ丁寧になるってもんでもないんだよと教え諭したが、渡辺電機(株)さんはカレーに夢中で横綱の話など聞いていないようだった。苦笑して立ち上がり、快晴の上野公園を見渡すと、白鵬は雪駄の音も軽やかに立ち去りながら、久しぶりに吉原でサッパリするか…と、呟いた。吉原ー!?渡辺電機(株)さんの絶叫に、横綱のみならず公園に居合わせたサラリーマン、易者、カップル、鳩、観光客、むじな、地縛霊などが振り向いた。左右の頬をカレーでパンッパンに膨らませた渡辺電機(株)さんが、米粒を飛ばしながら叫ぶ。ルートコか?ルートコ!!今はソープランドって言うんだよ、電機さん。すっかり高揚し、飛行機のポーズで両手を広げ、エンジン音を叫びながら吉原方面へ駆け出す渡辺電機(株)さんの後を、苦笑いしながら悠然と歩く横綱であった。

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ムーミン谷の懲りない面々

ねえムーミン、こっちむいて♪ 恥ずかしがらないで…。ねえ、ムーミン。おい。聞いとんけムーミン。こっち向け言うとんじゃボケ。おう何回言わすねんこら。あほんだらワレなめとったら、…??  執拗な呼びかけにゆっくりと振り向いたムーミンの顔面には、皮がなかった。むき出しの眼球から涙が流れ、赤い筋肉繊維の上を伝い落ちる。おい、どうしたんやムーミン。誰がこんなことを…? ワ、ワタナベデンキ…サン…。ムーミンが答え終わる前に、おれは思い切り跳躍してその場を逃れた。間一髪、白い炎を噴いて爆発炎上する、ムーミンの身体。もうもうたる煙の中にユラリと立ち上がる、麦わら帽子にポンチョ、ギターを背負う、丸顔に尖った鼻の黒いシルエット。それは紛れもなく、渡辺電機(株)さんであった。よく見破ったな。次こそは命をもらうぜ!おさびし山の唄を歌いながら、ゆうゆうと去っていく渡辺電機(株)さんを、おれは呆然と見送った。ま、そんなわけで今日はいろいろあったけど、土俵の方はいい相撲で勝てて、良かったんじゃないの。一日一日、その日が勝負ですから。(白鵬談)

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変態クリニックの罠

特定外来種の指定を受け、人々に追われる身となった渡辺電機(株)さんは、得意の大便変わり身の術や殺人屁を駆使して逃げおおせ、過疎地を転々としながら生き永らえていたが、ウッカリAmazonでTENGAの通販を頼んでしまったのが運の尽きで、潜伏先の瀬戸内海の陰茎島の周辺海域は漁船に取り囲まれ、手に手に松明やバナナを持った人々が、渡辺電機(株)さんのアジトを目指して上陸した。焚き火の煙を目印にアジトの周囲に集まった群衆が見たものは、長い逃亡生活の果てに年老いて髪の毛は白くなり、身長は伸び、高級スーツに身を包み堂々とした立ち居振る舞いの、まさに小泉純一郎その人であった。みなさん、よくいらっしゃいました。第一声でたちまち群衆の心を掴んだ渡辺電機(株)さんは、その熱い演説でたちまち人々の胸を打ち、虜にした。この国を変えていきましょう!渡辺電機(株)さんの叫びに呼応し、群衆が上げた共感の叫びは、やがて日本全土に波及して行く。日本政治の、新たな時代の夜明けだった。

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恐怖の報酬

ようオバマ!メシ食ってっか?ガハハ!ガハハ!上野動物園のチンパンジーの檻の前で豪快に笑いながら、檻の中に話しかけ続ける渡辺電機(株)さんは、すぐ係員に取り押さえられ、上野警察署に引き渡された。泣きわめいて抵抗するのを引き剥がしたリュックの中には、一房のバナナが入っていた。これをオバマにやるつもりだったのか。取り調べの刑事の問いに、渡辺電機(株)さんはうなだれて、弱々しい声で答える。いや…チンパンジーが好きなんです。いや、お前オバマって言ってただろ。あれはその、ちょっと似てるなって…すいません、人種差別は冗談になんないの分かってたんですけど。おろおろと弁解する渡辺電機(株)さんを、刑事は刺すような目で睨みつける。おい、誤魔化すなよ。おまえ知ってたんだろ、あのチンパンジーがオバマ元大統領の変装だってことに。え。ちょ、刑事さん何を。胸ぐらをつかまれ、渡辺電機(株)さんの身体は軽々と宙に浮いた。おれは刑事じゃない。FBIの日本駐在捜査官だ。国家機密法違反により、貴様を本国に連行する。元大統領が動物園に身を潜め、のんびりとセミリタイア生活を満喫している頃、一人の漫画家が、人知れずこの世から存在を抹消されたという。

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きちがい甲子園

ついに始まった高校野球の祭典、夏の甲子園。快晴の青空の下、満員の大観衆を前に選手宣誓を務める、全裸の渡辺電機(株)さん。歯のない口で意味不明の言葉をだらだらと垂れ流し、その支離滅裂なスピーチの中に時折「電波」「陰謀」「アベ政治」などの単語が混じり、口調は次第に怒りを帯びて行ったが、整然と並ぶ球児たちやスタンドを埋め尽くす観衆は、おとなしく耳を傾けた。彼の脳内にしか存在しない甲子園の、彼にしか見えない人々が、彼の邪魔だてをするわけもないのだ。ここは西成公園。流浪の果てにやっとたどり着いた、渡辺電機(株)さんの終の棲家であった…。

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アイドルマスター真剣勝負

海浜幕張駅の朝。始発列車から続々と吐き出され全力疾走で改札に殺到するオタクたちを蹴散らして、唸りを上げて突進する巨体は、見間違えようもない、横綱白鵬その人であった。どかんかい!天下の横綱がデレマス物販に初参戦じゃーい!背中に乗って威勢の良い掛け声を上げ、「横綱参上」の幟を振り回す渡辺電機(株)さん。横綱は自動改札機にSuicaを力任せに叩きつけ、粉々に粉砕された残骸を飛び越え、一直線に海の方へ駆けて行く。オタクが雲霞の如く群がるメッセ前を何故か素通り、海浜公園に向け爆走する。ちょ、横綱!そっちじゃないっす!背中で慌てる渡辺電機(株)さんを意に介さず、横綱はなおも地響きを立てて一直線に東京湾を目指して走った。轟音と巨大な水柱を上げて海中に没した横綱は、やがてぽこんと浮かび上がると、海面の向こうにかすかに見える対岸の羽田空港を目指し、抜手を切ってゆっくりと泳ぎだした。横綱の背中にしがみついて悲鳴を上げ泣き叫んでいた渡辺電機(株)さんは、横綱の動きに合わせて水中に没したり浮かんだりを繰り返していたが、やがて姿が見えなくなった。

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