カラーギャング時代の仲間たちと同窓会。当時のスピリットを思い出し、全裸にキミドリ色のスプレーを噴射、充血した目を全身にビッシリ描き込んで颯爽と街へ出たが、会場に辿り着くどころか地元の駅前で職務質問を受け、逃走した背後から大腿部に銃弾を浴び、捕縛された。あとで聞けば、他の参加者は全員ジャケツやラッパズボン等、普通の格好で会場入りし、おとなしくビールで祝杯を上げ余興のカラオケ大会で盛り上がったとのこと。もう、あの頃とは違うんやな…。
続きを読むリングの殺人鬼
猪木のやつ、アリの弱点の足ばかり狙いやがって卑怯な野郎だ!わめき散らした拍子にテレビの画面一杯に飛び散ったご飯粒を、布巾で乱暴に拭き取ると、渡辺電機(株)さんは残りの味噌汁を冷えた飯にぶっかけ、大きな音を立ててすすり込んだ。待ってろアリ!今この渡辺電機(株)さまが助けに行くぜ!必勝鉢巻きを締め、両手にフライパンと消火器を持った渡辺電機(株)さんは、ひと息フンッと鼻息を吹くと、明滅するモノクロの画面めがけて、頭から飛び込んだ。翌日、血だらけで工場に出勤した渡辺電機(株)さんが、猪木の野郎をとっちめてやったぜ!と吹聴するのに耳を貸す者は、いなかった。また始まったよ、嘘つきのドチビ中年がよ。話しかけんじゃねえ初老童貞。なおも一人でブツブツ言いながら作業に就く渡辺電機(株)さんは、それでも幸福そうに、歯のない口で笑っていた。「探したぞ」頭上から響く野太い声に顔を上げると、偉大なる巨人ジャイアント馬場が、鬼の形相で立っていた。大きな手の中には、ひしゃげた血まみれのフライパン。猪木の仇を取らせてもらう。格闘に命をかける者を侮辱され、黙っているわけには行かん。工場は、阿修羅の血に染まった。
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