渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

青春時代

カラーギャング時代の仲間たちと同窓会。当時のスピリットを思い出し、全裸にキミドリ色のスプレーを噴射、充血した目を全身にビッシリ描き込んで颯爽と街へ出たが、会場に辿り着くどころか地元の駅前で職務質問を受け、逃走した背後から大腿部に銃弾を浴び、捕縛された。あとで聞けば、他の参加者は全員ジャケツやラッパズボン等、普通の格好で会場入りし、おとなしくビールで祝杯を上げ余興のカラオケ大会で盛り上がったとのこと。もう、あの頃とは違うんやな…。

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若いこだま

パパとママが、おふとんの中で、おすもうをとってました。ぼくはママにみかたして、パパのあたまを、金属バットで叩き潰した。ママ、てめえもだ!死ね!我に帰ると、おれは独房の中に散乱する大事な木彫りの仁王像と観音像の破片を前に、荒い息をついていた。また、やってしまった…。

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ひとでなし

ユデタマコ大食い競争で決着をつけようという事になり、力士相手にまともに勝負もできねえなと考えたおれは、事前にスタッフに裏金を掴ませ、おれにはウズラ、稀勢の里にはダチョウのタマゴを出す手はずを整えた。いざ勝負が始まると、おれの前に積まれたウズラのユデタマゴはひとつ残らず、孵化しかけのヒナが茹で上がった無惨な姿で死んでいた。食えねえ。号泣するおれの隣には、タマゴから孵ったばかりのダチョウのヒナを生きたままモリモリ食う横綱の、勝ち誇った姿があった。

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横綱大社長

白鵬、優勝おめでとう!そう留守電メッセージを残して連絡を待ったが、横綱からはなんの音沙汰もなかった。いつもなら、祝賀会で酔っ払って上機嫌で電話をかけてくる、あのひょうきん者が。まさか、優勝を逃したのではあるまいな。床の間の日本刀を掴むと、渡辺電機(株)さんは無表情のまま、念を発して亜空間を跳んだ。

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リングの殺人鬼

猪木のやつ、アリの弱点の足ばかり狙いやがって卑怯な野郎だ!わめき散らした拍子にテレビの画面一杯に飛び散ったご飯粒を、布巾で乱暴に拭き取ると、渡辺電機(株)さんは残りの味噌汁を冷えた飯にぶっかけ、大きな音を立ててすすり込んだ。待ってろアリ!今この渡辺電機(株)さまが助けに行くぜ!必勝鉢巻きを締め、両手にフライパンと消火器を持った渡辺電機(株)さんは、ひと息フンッと鼻息を吹くと、明滅するモノクロの画面めがけて、頭から飛び込んだ。翌日、血だらけで工場に出勤した渡辺電機(株)さんが、猪木の野郎をとっちめてやったぜ!と吹聴するのに耳を貸す者は、いなかった。また始まったよ、嘘つきのドチビ中年がよ。話しかけんじゃねえ初老童貞。なおも一人でブツブツ言いながら作業に就く渡辺電機(株)さんは、それでも幸福そうに、歯のない口で笑っていた。「探したぞ」頭上から響く野太い声に顔を上げると、偉大なる巨人ジャイアント馬場が、鬼の形相で立っていた。大きな手の中には、ひしゃげた血まみれのフライパン。猪木の仇を取らせてもらう。格闘に命をかける者を侮辱され、黙っているわけには行かん。工場は、阿修羅の血に染まった。

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