渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

ロッキンコンチェルト

 今日はうそをつく余裕が無いので、とりいそぎ電子書籍の新刊のご案内のみとさせていただきま、えっ誰あんた。警察。いや、人違いじゃないっすか。いや昨日?昨日でしょ?おれ昨日ずっと仕事行ってて、なんだ触んな!知らねえよ!女のパンツなんか興味ねえし!離せよ!はな、ちょっ、アッお前なんだそのとんがった耳、お前ら警察じゃねえな!ウワッなんだコウモリ人間?助けて!誰かたすけてー!!

クソゲー戦記 ドラゴンサーガ

クソゲー戦記 ドラゴンサーガ

 

 

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野獣死すべし

祝日の今日は八景島で営業が一本。イルカショーも最近は本物のイルカを使うところが増えてきて、われわれ職人の出番も減りつつある。そりゃイルカ「に見立てた」おっさんが舞い踊るよりは本物のイルカを使ったほうがお客が盛り上がるのは当然だが、獰猛な禽獣と人間が一緒に泳ぐことで、不幸な事故も増える一方と聞く。トレーナーが片腕を食いちぎられた等は日常茶飯事で、客の目の前で骨も残さず食べられる例も少なくない。今後ともわれわれイルカ職人への理解を深めるとともに、より安全管理を徹底して行かねばならないと、思いを新たにしている。

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グランシャトーはレジャービル

大阪に行くと必ず寄っていた京橋駅前のうどん屋「京橋浪花」が店を閉めてしまったので、おれの記憶の中の浪花を訪ねて、おやじにワケを聞いてみた。おれの記憶がうろ覚えなためか、おやじの顔も声も曖昧で聞き取りづらく、くぐもった声で「景気が」「再開発が」「ウオノメ」「想像妊娠」「おおきに」「Жの亢∟」と、断片的に聞き取れる単語を拾っても、結局よくわからないままだった。記憶の中の京橋は巨大なソテツやメンガリス、ヒトサライの巨木が林立しており、極彩色のネオンが濃霧ににじんで、そこにいるだけでおれの頭もぼうっと曖昧に霞んでいくようだった。早々に退散したが、帰ってきた東京も蒸し暑く、濃霧の中に見たこともない巨木が林立して奇怪な花々を咲かせており、もう誰の記憶の中にいるのかも、よくわからなかった。

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Star Child

駅のゴミ箱から拾った食いかけのツナサンドや、庭で干からびている犬が残したエサを食っても、腹が満たされ力がみなぎるばかりで、全く腹を壊したりしないこのおれだが、アイスの食い過ぎには注意が必要だ。さっきも近所のケーキ屋で店員の目を盗んで、持ち帰り用のドライアイスをひとつかみかっさらい、バリバリ食いながら歩いていたら、なんだか腹具合が。気づいた時にはもう遅く、ケツから甲高い破裂音が聞こえたと思ったら、おれの体はすでに雲の上を飛んでいた。さらに二段、三段と連続噴射によってたやすく衛星軌道に乗ったおれは、時折り名残り屁を放ってクルクルと回転しながら、地球上空を回る星のひとつになった。

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宇宙の征服者

「おれはニューヨーク・ジェッツのクォーターバック、渡辺電機(株)だ!」決然と言い放ち、得意のタックルで次々と敵をなぎ倒そうとした渡辺電機(株)さんは、小柄な初老の守衛に苦もなく取り押さえられた。女生徒たちに囃し立てられ、チョークや上履きを投げつけられ、泣きながら近所の派出所に連行された渡辺電機(株)さんの、安物の真っ赤なタンクトップはぼろぼろに千切れ、貧弱な二の腕のBCG痕が、侘びしさを一層つのらせた。あんた、こんな派手な格好で女子高に下着泥棒とか、いい歳して何考えてんの。調書を取る若い警官の舌打ちと、しゃくり上げる渡辺電機(株)さんの泣き声が、登別の澄んだ青空に溶けて消えて行った。

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渦状星雲創成記

今日のテロ行為:駅前のスカしたスタバの店内に、でかいガガンボ500匹を放つ…!!こうしてスタバの入り口で、ガガンボ500匹にたかられて立ったまま死んだおれの亡骸は、誰もが気味悪がって近寄らず、そのまま3日ほど放置された。さすがに評判を呼び、新聞沙汰にもなった頃になり、ようやく駅ビルの管理会社が撤去の作業員を派遣した。作業員がおそるおそる人型をしたガガンボのかたまりをモップでつつくと、一滴残らず体液を吸われてオレの肉体は完全に消滅し、中は人型の真空になっていた。崩れ落ちたガガンボのかたまりはたちまち真空に吸い込まれ、すさまじい突風が吹き荒れ、作業員や周囲の人、モノ、自然物や建築物がモノスゴイ勢いで吸い込まれ、真空の中へ消えていく。おれの形をしたブラックホールは、今も周囲の天体を吸い込みながら、やがて銀河系をも飲み込み、新たな渦状星雲の中心を形成しつつあるのだった。

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Kinky Afro 2016

聖なる出羽三山の山頂で均等にうんこをする計画を実行に移し、羽黒山、湯殿山と山頂の野原にモリモリ大量の大便を積み上げ、意気揚々と登った3つめの月山。山頂に広がるチングルマの茂みに入り、花の香と小鳥のさえずりの中でモリモリと脱糞、満足のマリファナを深々と、至福の一服。急いで歩けば日暮れまでに戻れそうなので、山小屋には泊まらず、そのままやや急ぎ足で下りることにした。もう夕焼けが迫り人気もない登山道を、麓の方からズンズンとモノスゴい速度で登ってくる少年に気づいた。こんな時間に、学生服で、山頂に何の用があるのか。坊主頭の凛々しい学生は、おれに一瞥をくれることもなく、ヒタと真正面を見据えて、速度も落とさずおれの横を通り過ぎ、夕闇の中へ消えて行った。すれ違う際に巻き起こった一陣の風は、(   )。

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