渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

地球最後の男

筆者の友人が先代柳家小さん師匠の最晩年、紀伊國屋ホールでの高座を見ているのだが、これが「笠碁」と「碁泥」が混ざってループしてしまい、とうとう見かねた弟子が観客に謝罪して師匠を舞台から連れ去るという、なんとも切ないものであったという。あの名人でも、歳には勝てなかったのである。だが、渡辺電機(株)さんだけは、いつまで経っても老熟する事を知らず、インターネットを閲覧しては匿名で同業者を口汚く罵り、女人の肌脱ぎ写真を集めては野獣の咆哮を上げていた。120歳を超え、二度の戦火もくぐり抜け、日本が消滅し北の国家の一部となり、やがて永い氷河期を迎えても、渡辺電機(株)さんは健在だった。数万年の時を経て、すっかり人類も死に絶えた雪解けの頃、渡辺電機(株)さんは久々に近所のコンビニに買い出しに部屋を這い出し、初めて時の流れを知った。ちょっとお男子!ぷうっと頬を膨らませ腰に両手を当て、怒ってるんだゾのポーズをとると、渡辺電機(株)さんの身体はぐずぐずと崩壊し始め、塵になって無人の荒野に吹き荒れる風に飛ばされ、何もなくなった。

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