渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

花と蛇

二人で合作していた作家がコンビを解消した例といえば、藤子不二雄と岡嶋二人、そしてあまり知られていないが、団鬼六もまた、そうした例のひとつである。もともと佐渡の鉱山で奴隷として働いていた黒岩幸彦と、そこで奴隷監視人として悪逆非道の限りを尽くしていた渡辺電機(株)。ふとしたことから黒岩の才能を見ぬいた渡辺が持ちかけて二人で密航して佐渡を脱出、上京した。黒岩に書かせた小説を、二人の合作と称して出版社に持ち込んだ渡辺が、原稿料や印税の大半を独り占めし、ひたすら執筆し続ける黒岩を叱咤罵倒、殴打するなどしてひたすら貢がせ、己は働きもせず暴飲暴食にオモチャを買い漁るなど好き放題の暮らしをした挙句、中年を迎える頃に重度の糖尿病を発症、生死の境を彷徨った末に失明状態となり、我が身の不運を呪いながら病臥した。やがて黒岩が変態の巨匠・団鬼六としてメディアで活躍するようになると、いよいよ渡辺を顧みる者はいなくなり、ゴミ屋敷と化した自室の壁にルージュで「皆憎」と書き遺して干からびた遺体が発見されたのは、死後数年後のことだった。