渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

格闘まんが道

格闘技で手塚と決着をつけてやる!暗闇五段こと寺田ヒロオは、漫画界のために刺し違えて死ぬ覚悟を持って、道場へ向かった。子供のために良い漫画、正しい漫画を残すために、諸悪の根源であり俗悪漫画の権化である手塚治虫を、おれは倒す!そんな寺田を道場で待っていたのは、格闘技を割烹着と聞き間違え、おかみさんのように甲斐甲斐しく食事の用意をする、割烹着姿の手塚であった。おなかすいたでしょ?早く手を洗ってらっしゃい。満面の笑みで迎える手塚の姿に、寺田は恋をした。一目惚れだった。湘南の自宅離れでの、新婚生活が始まった。ときに1992年9月のことである。

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幕末英雄伝

くさいくさい!四つ足の匂いがするのう!どこぞの西洋かぶれが獣の肉を食っておるようじゃな!倒幕派の不届き者が隠れておるのではないか?尊攘派の志士たちの間でも空気の読めない過激分子として、浮いた存在になっていた渡辺電機(株)さんが、これ見よがしに刀を振りかざし、乱暴に引き戸を開けて現れたのは、西新宿のステーキハウス「そよかぜ」であった。不潔な浪人の身なりに眉をひそめる客の間を縫って、素早く駆け寄る初老のマネージャー。お客様、ご予約はお済みでしょうか。予約もクソもあるかこの毛唐の犬どもがぁ!渡辺電機(株)さんが刀を抜いたその刹那、華奢なマネージャーの左手がかすかに揺れたと見えると同時に、渡辺電機(株)さんの体は真後ろに吹っ飛んだ。浪人風情が、口で言ってもわからんようだな。ヒィッたた、助けてくれいッ!!渡辺電機(株)さんの泣き声が、肉を打つ乾いた音にかき消され、静かになった。武士の世が、終わろうとしていた。

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つるの恩返し

決して覗いてはいけませんよと言われて、その禁を破って覗いてみたら、なんとエロ本を読んでいました、というのが江口先生の漫画にありましたが、まあ覗くなと言われたら覗かずにいられないのが人間というものです。罠にかかってケガをしていた安倍総理を助けて自宅に連れて行って介抱して、そういうことを総理に言われれば、覗いてみたくなる気持ちも一層強いワケですよ。で、覗いてみたら、なんのこたあない恩返しどころか、国会の予算委員会で野党の質問者と丁々発止やりあっとるんですわ!オイコラ恩返しはどないなっとんねんと突っ込むと、国民のためにこうして粉骨砕身頑張ることがひいては最大の恩返しとかなんとか、そりゃもう弁が立つから、なんも言い返せません。ぐうの音も出ない。警備のやつらに取り押さえられて、監獄に入ってもう何年になりますか。シャバで起こった戦争は、どっちが勝ったのやら…。

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うな丼大好き!

東京浅草の老舗うなぎ屋で奉公を始めたのが、人より遅い28歳。それまでの過去を問わずに雇い入れてくれた主人の下で、下足番からコツコツ修行を積み、甲板掃除、洗い場、銛磨きを経て、35歳で餌の犬捕りに昇格、40歳にしてようやくウナギ猟に参加を許された。冬の海に漁船で乗り出し、餌の犬を吊るして獲物を待つ。やがて轟音とともに水面が盛り上がり、犬の香りに釣られたウナギが姿を現した!シロナガスクジラの数倍の大きさの、黒光りする巨体をくねらせた凶暴なオオウナギに、何本もの銛が打ち込まれる。荒れ狂いのたうち、甲板の人足を何人も飲み込みながら、ウナギはたしかに人間の言葉を発した。「コロシテ…ハヤクコロシテ…」一度でいいからうなぎを食べたいと念じ続け、貧しい暮らしの果に海に身を投げた渡辺電機(株)さんの、変わり果てた姿であった。

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アニマルインデックス

道場に集められた、ゴリラ、マントヒヒ、ヒグマ、イボイノシシ、バッファロー、アリゲーター、アフリカゾウ、ベンガルトラなどの凶暴な猛獣たち。動物界の柔道ナンバーワンを決めるトーナメントが、いよいよ幕を開ける。「始めッ」掛け声とともにダッシュで窓から逃げようとした、審判のおれの襟首を掴んだゴリラが、力任せにおれを道場の畳に叩きつける。所詮はけだものの群れ、ルールも品位もあったものではない乱闘が始まり、道場に野獣の咆哮が鳴り響いた。やがて静けさが訪れ、累々と横たわる猛獣たちを見下ろして立っているのは、誰あろう横綱白鵬関だった。やっぱり、あんたが残ったんだ。「決着をつける時だよ、電機さん」ゆっくりとこちらへ向かって来る横綱は、ネコ科特有の縦長の虹彩をもつ黄金色の眼を光らせ、牙をむいて舌なめずりした。

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死んでもらいます

シロアリ駆除業者に変装して家に上がり込もうとした白鵬の背後から金属バットで思い切り殴りつけたのだが、バットは乾いた音を立て、くの字に曲がって庭に吹っ飛んだ。あかん殺される。そう思って身を固くしたが、白鵬は黙々と作業を進め、お代の方は協会から請求書お送りしますんで!と朗らかに笑い、帰っていった。間もなく届いた請求書の金額欄には、血文字で「おまえの命」と書かれていた。

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男の酒

何がフードペアリングだ田舎者が「つまみを探す」でいいだろうが!そこに座れ!おれの怒声に直立不動になった高田延彦が、表情をこわばらせてその場に正座する。てめえにヘネシーなんぞ6億年早ええんだ。これでも喰らえ!正面に仁王立ちしてパンツを下ろし、その顔面めがけて勢い良く放尿する。高田はまばたきもせず、目を見開いたままおれの小便を真正面から受け止め、身じろぎもしなかった。キリンフリーですか、電機さん。顔にしたたる小便をひとなめして、高田がゆっくりとつぶやく。あ、ああ。おれ酒あかんの知っとるやろ。それがなんやっちゅうねんおらぁ!顔を蹴り上げようとしたおれの足を人差指と親指だけでつまみ止め、動揺を見透かすように軽くため息をつく。電機さん、あんたの好きなキリンフリーに、極上のつまみをご用意させていただきますよ。高田はゆっくりと立ち上がり、おれの顔面の上にまたがると、片手で軽々とおれの口をこじ開け、健康そうな特大の一本糞を音もなく排泄し始めた。飲み込まないと、窒息しますよ電機さん。一本糞はいっこうに途切れる気配もなく、一定のペースでゆっくりと肛門から吐き出されてくる。必死に飲み込みながら、視界いっぱいに広がった高田の肛門が、いつまでも収縮と弛緩を繰り返すのを見つめていた。

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