渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

ラストハルマゲドン

竹ヤリの先に高々と掲げられた渡辺電機(株)さんの生首が、戦争の終わりと平和の訪れを物語っていた。人々は万歳三唱して泣き、歓び合い、悪鬼の形相で固まった生首めがけ、レンガや石つぶてを投げつける。この世を恐怖と悪夢に陥れた悪魔・渡辺電機(株)が、ついに民衆の手によって倒されたのだ。生首を幾重にも囲む人垣から飛び交った悪罵はやがて、平和を喜ぶ歓喜の歌声へと変わって行き、街には笑顔があふれた。「選手交代」厳かに呟くと、濃紺の締め込みをポンと叩いて力水を含み、プッと足元に吹きかけると、白鵬は盛り塩を右手ですくい取り、振り向きざまに高々と撒き散らした。みるみる顔面は朱に染まり、肉体はメリメリと盛り上がり身長は100mを超え、地鳴りのような咆哮を発し、大地を揺るがしながら街へと向かって行く。渡辺電機(株)の遺志を受け継ぐ、この世への宣戦布告であった。

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ボクラパノラマ

越前ガニ解禁を控え、いてもたってもいられなくなり、ワンツースリーフォーカニカニオーイェーと絶叫しながら、ふんどし一丁に両手をチョキのダブルピースで駅前を走りまわっていた渡辺電機(株)さんだが、白鵬のおごりでかに道楽でタラバガニを腹いっぱい食ったら、もうカニいらなーいゲップなどとうそぶいてスキップしながら家路につき、激怒した京丹後漁業組合の防音仕様のプリウスで拉致され、久美浜湾に投げ込まれて越前ガニのエサとなり、骨も残らなかった。

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黒い狂気

ゴム製のオバマのマスクを着けて、夜の街に出ては通行人への膝カックンや巨人軍宿舎のピンポンダッシュ、2丁目公園トイレで隣のチンコ覗き等、他愛もないイタズラをしていたのだが、近頃どうやらおれの偽者が現れて、シャレにならない悪事を働いているらしい。許せんッと義憤に駆られ、おおかた白鵬の変装だろうと、ちゃんこの匂いでおびき寄せたところ案の定、白味噌仕立ての香りに誘われてフラフラと、オバマの面をつけた大男がやってきた。コラッ横綱!一喝したが、なんか反応が鈍い。アレッと思いよく見ると、手が黒い。曙かよ!プロレスラーならいいかァと、背後からパイプ椅子でブン殴ったら、そのままちゃんこに顔面突っ伏して気絶。曙でもマスクでもなく、オバマ大統領その人でした。たちまち黒服のSPが殺到しておれは黒い車に連れ込まれ、どこへ連れて行かれたのやら、二度と見た者はおらなんだ。めでたしめでたしや。

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房総サナトリウム悲話

今までありがと。電機さんが作ってくれたかじめの味噌汁、美味かったなァ…。病床でつぶやき、痩せこけた頬にひとすじ涙を流す横綱。そんな姿を見ては、いてもたってもいられない。付け人たちの制止を振り切って、新鮮なかじめを求め、荒れ狂う夜の海に入っていった渡辺電機(株)さんは、それきり戻って来なかった。翌朝、ケロリと全開した横綱白鵬は、渡辺電機(株)?誰それ?と、不思議そうな顔をして、付け人たちとふざけ合いながら、両国の街へ還って行った。

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お嗤い男の星座

いつもこのブログを読んでくれている皆様、渡辺電機(株)の家族の者です。本人に代わりまして、ご報告させていただきます。渡辺は「マオ思想の普及のため、おれはインドに渡る」と言い残して、多摩動物園から盗み出したニホンザルとキジとヤブイヌを連れ、東京ディズニーランドの焼却炉の中に消えて行きました。彼らしい最期だなと思いましたが、爆発した焼却炉の焼け跡のガレキが崩れたところから、チリチリパーマになった顔をぴょこんと出し、「ブッホ」と黒い煙を吐いて見せる、最悪のオチが用意されておりました。結局、この騒ぎが尾を引いて社会復帰もままならず、晩年は保谷の小料理屋で下足番として、生涯を終えたとのことでございます。

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マンガ家デビュー必勝法

バブルの頃の話。「新人賞荒らし」と聞こえは良いが、要するにフリーのアシスタントで食いつないでいるベテランが、そこそこ作画の基礎はできているので、雑誌の月例賞などに応募すれば、今と違って業界の気前も良いから、努力賞くらいにはひっかかる。そうやって、同じ原稿で何度も複数の雑誌の新人賞に応募しまくり、わずかな賞金を稼いでいると。噂には聞いていたが、石森プロで本当にそういうおじさんに出くわした時には、持参したヨレヨレになった何年も前のデビュー作のゲラ刷りを見て、なんとも陰惨な気分になったものだ。その陰惨な気分になった渡辺電機(株)さんが今、持ち込みに行って「帰りの交通費もない」と泣きつき小銭をせびる、さらに惨めな新人賞荒らしをしているという噂は、すぐに業界中に広まった。だが、その渡辺電機(株)さんの電話をとった編集者は、なぜか幸せな結婚ができるというジンクスも同時に広まり、その行いが咎められることもなく、飯田橋駅構内のトイレで餓死しているところを発見されるまで、業界内で広く愛され続けたという。

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レモンの青春

 金が無いからすうどんを頼んだら「酢丼」が出てきて、お代は千円なんですって。白飯にお酢がかかってネギがふりかけてあるだけの簡素な丼ですが、なんか有名なお店の高いお酢を使ってるって。酸っぱいし目にツンツン来るし、もう目を真っ赤にして涙ボロボロ、むせ返りながら完食しました。したら厨房から白鵬が飛び出してきて、どっきりでした〜〜ん!じゃないっつの。本場所休んで、何やっとんの。ま、そもそもあの休場も、おれが土俵下の力水とお酢をすり替えて、大惨事になったのが原因だしな…。

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