フンボルトペンギンは体長60〜70cm、体重4〜5kgと聞いていたので、さすがに目の前の巨大なペンギンが横綱の変装であることくらいは分かる渡辺電機(株)さんだったが、カオ、カオと鳴きながら生のイワシを躊躇なく丸呑みするその役者根性には、ただただ頭が下がる思いだった。おれには、できねぇ。感心して首を振る渡辺電機(株)さんを遠巻きに取り囲む群衆をかき分け、数人の警官が駆け寄ってくる。横綱と対照的に、全裸に白黒のペイントを施してシャチと称する渡辺電機(株)さんの舐めたコスプレを、世間は許さなかったのだ。投獄された渡辺電機(株)さんが刑期を終え出所するまで、横綱はペンギンのコスプレを一度も解くことなく、待ち続けたという。
