西成のコージーコーナーでバイトを始めた動機は単純で、賞味期限切れのケーキ食い放題持ち帰り放題を目論んでいたのだが、勤務明けに廃棄品の詰まったビニール袋を両手に下げてイッヒッヒと笑いながら通用口から出たおれを、街の天使たちがヨダレを垂らし目を光らせ唸り声を上げながら、取り囲んだ。トゥッ！！こんなこともあろうかと履いていた、ドクター中松考案のジャンピングシューズで宙に舞ったおれを見上げて咆哮する天使たち。ビルの谷間を屋上から屋上へ飛び移りながら逃げるおれの背後に、黒い巨大な影が追いすがる。もちろん、その頭部にはチョンマゲが…。チャンコを食っても、ケーキは別腹やねんな…。ケーキを巡ってドヤ街の空を駆け回るおれたちを、大阪の朝日があかあかと照らし出した。
暴走する叙情性とテクニックをコンパクトに切り詰めてコンテンポラリイな域に達した名作だと思ったのだが、再発CDはジョン・ウェットン参加のボーナストラック追加でダラダラと長く、割りとモッタイない感じになっていた。
