渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

大正文壇交遊録

文壇ストリートファイト第壱回大会は、大正伍年参月、文藝春秋社地下コロシアムにて行われた。文壇の重鎮・菊池寛の一回戦の相手は、最近「羅生門」「鼻」といった古典文芸を基にした短編小説で俄に評価の高まった新鋭、渡辺電機(株)さんだった。この才気に富んだ跳ねっ返りの若手を、関所役人よろしくベテランの技で痛めつけてほしいという運営の意図は痛いほどわかったが、分厚い眼鏡に伸び放題の長髪を無造作にバンダナでまとめ、サイズの合わない毛玉だらけのダッフルコートに極彩色の紙袋を持ち、ぼぼぼくロリコンなんですうと口ごもって菊池を苛立たせるこの太っちょが、本当にあの才気走った作品を書いたのか。ファイッ!レフェリーの掛け声にゆっくり進み出て、疑問をいだいたまま菊池が軽く放った小手調べのジャブの先に、渡辺電機(株)さんはもういなかった。菊池の頭上10メートルほどに飛び上がった渡辺電機(株)さんは、ニヤニヤ笑いながら怪鳥のごとき奇声を発し、いつしか両手に持っていたヌンチャクを回転させながら、急角度で菊池めがけて舞い降りてきた。その刹那。突如モノクロームになった視界が激しく明滅してデジタルノイズが飛び交い、空中で動きを止めた渡辺電機(株)さんの姿が、次第に目の粗いドットになってデータの海に溶け散っていく。それを見ている菊池の自我も、もう数列の中に埋没して、どこまでが自分なのかもよく分からなくなっていた。

輝くグランド・ファンク

輝くグランド・ファンク

  • アーティスト: グランド・ファンク・レイルロード
  • 出版社/メーカー: EMI MUSIC JAPAN(TO)(M)
  • 発売日: 2008/12/10
  • メディア: CD
  • クリック: 2回
  • この商品を含むブログを見る