おれの大事なゴミ屋敷が行政の手で更地にされてしまったので、隣にあった古ぼけた祠に勝手に住み着いている。夜な夜な侍の幽霊とかひとだまとか出てきて、当初はなかなか眠れなかったが、災い転じてなんとやら！と、妙案がひらめいた。三条河原で勝手に引き抜いてきた高札に「平将門切腹の地」とデタラメを書き、拝観料入れの箱とともに設置しておいた。すると幽霊が相乗効果を産み、勝手にどんどん観光名所として人が集まり、マンション購入の頭金もすぐできた。だが、その高札の行方と引きぬいた犯人を、新選組が血眼になって探していることを、その時おれはまだ知らなかった。
