渡辺電機(株)

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アラビアの夜の種族

父親の仕事の手伝いでバーレーンに滞在した2年間の間に、現地の女5人を孕ませて、その後始末に往生したものだが、結局金で解決した。あれから25年。その子どもたち5人がおれを殺しに日本にやってきたという。アラビアの殺人鬼といえど、おれの子供には違いない。覚悟を決め、自宅一階の応接間のソファに身体を沈め、レミーマルタンのグラスを傾けながら、子どもたちを待った。どこからともなく中近東の音楽が流れ、窓の外にラクダにまたがった5人の隊列のシルエットが見えた。やがておれの前に並んでマシンガンを構えた5人の男たちのうち、ひときわ大きな身体の男の頭に大銀杏が乗っているのが、覆面越しにもはっきりと分かった。「横綱さあ。おれがバーレーンにいたとか子供を生ませたとか、あれ全部ウソだから」おれの言葉に白鵬は舌打ちして、ものも言わずに出て行った。もじもじ気まずそうに立っている残りの4人に、千円入りの大入り袋を配ってやると、ホッとしたように受け取り、ぞろぞろ表に出て行った。やがて外から白鵬の怒声と、肉が次々地面に叩きつけられる音が聞こえてきた。

アヴォンモア

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