来週のバーベキューのメインディッシュにすべく、河童を捕まえに善福寺川の上流に行ったのだが、野生の河童はすっかり文明が進化して、今ではみな手作りのログハウスを建ててペンションや高原レストランを開き、手作りブルーベリージャムやチーズケーキが雑誌やTVでも紹介され、若い女の子に大人気だそうである。日曜の午後に行列を作る女の子たちをかき分けて、血まみれの河童を担いで引き上げるおれの背中に、罵声や生玉子、トマト、鉄扇、ヨツアナカシパン、地蔵、小川国夫文学全集第3巻などが投げつけられた。小川国夫はいちおう神保町に持って行ってみたが、全集はバラだとゴミ同然と言われて、値がつかなかった。あきらめて帰ってきたら河童は縄をほどいて逃げてしまい、キッチンの壁に真っ赤なルージュでキュウリの絵が描いてあった。
