ジャラリン子

おうお前ら早稲田のガキどもがなめとったらあかんぞこらぁ！おれの怒声に完全にビビったのか、その若者たちは高田馬場駅前の広場で、笑顔を凍りつかせたまま固まっている。いくら漫画家からホームレスに落ちぶれたとはいえ、こんなヘラヘラ笑うガキどもから投げつけられた森永の缶しるこをありがたがるほど、落ちぶれちゃいねえんだよ。あとはいくら巻き上げられるか…。おい、お前ら早稲田出てええ会社入るんやろ。ええなあ。いえ違います。はあ何ぬかしとんねん。早稲田やろお前ら。いえ、ぼくら宮城野部屋の。よく見ると、全員チョンマゲをつけて、鬢付け油の甘い香りを漂わせている。もう逃げられない。急に腰から下に力が入らなくなり、へなへなと崩れ落ちた俺の背後から、静かに近づいてくる雪駄の音が聞こえた。

MOOG: The Electric Eclectics Of Dick Hyman