終戦時に上海から引き揚げる際、泣く泣く現地の一家に預けてきたたった一人の弟が、生きて我が国に還ってきた。70年ぶりの再会、何と言葉をかけたものか。日本語は通じるのか。当時まだ幼かった彼は、私を覚えてくれているのだろうか。不安と感激をないまぜに成田空港のロビーに出向いた私の前に、一見して人型アンドロイドとわかる、ライトグリーンのロングヘアをなびかせた美少女が立っていた。「兄さん、おひさしぶりです」「どっきりかい！」勢いつけて脳天めがけ打ち下ろしたハリセンが、その黄緑色の髪に触れる寸前で素粒子バリアに触れ、瞬時に分解した。「DNAを抽出して、脳みそも肉体も全部新しくしちまったよ。中国三千年の最先端技術を思い知るがいいさ、兄さん」「こっちの科白だよ大陸ボケが！」こんなこともあろうかとサバイバーショットを装着していたおれに、ぬかりは無かった。国際線ロビーに電子音を響かせて、銃撃戦が始まった。
