渡辺電機(株)

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暗殺者の夜

白鵬を殺ってくれ」そう言って、窮屈そうにドトールの座席に座り直した、タイガーマスクをかぶった大男が佐山ではないことは、そのモンゴル訛りからも明白だったが、男は頑固に自分が佐山であると言い張った。「ギャラはモンゴル通貨での支払いになるが、必ず払う。頼んだぞ」「それはドルジさん、ご自分で殺った方が早いのでは」言いかけると、大男の右手の堅い掌が迫ってきて、おれの顔面全体を覆った。「余計なことは言わないし、詮索しないことだ。わかったな?」窒息寸前のおれを解放し、コーヒー代も出さずに店を立ち去った男が、突如その場で硬直し、路上に土下座した。店外で待ち構えていたであろう横綱白鵬の前で、必死に何ごとか弁解している。大男がこちらを指さして何か言うと、横綱がみるみる無表情になり、無言でゆっくりと店内に入ってきた。

なんだこれ、持ってたぞ。なんで持ってたんだろう。たぶん、あがた森魚のファンクラブ関連の何かだと思うのだが…。