渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

哀愁のボレロ

うんこ味のシャーベットとシャーベット状のうんこ、どっちがいい?そう言って渡辺電機(株)さんがもりもりと脱藩した太く長い大便は、真冬の八甲田山中の冷気の中で、出るそばから凍りつき、サラサラと崩れ落ちた。気づくと、渡辺電機(株)さんの体も、サラサラのシャーベット状になり、崩れ落ちた。

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チューリップのアップリケ

日本相撲協会の特命を受け、渡辺電機(株)さん暗殺のために東京を訪れた、トルコ系殺し屋のイブラヒム・ハッサンは、南千住保育所の夏祭り会場で無邪気に笑い、ヨーヨー釣りやおもちゃすくいに興じる渡辺電機(株)さんの笑顔を見て、かつて味わったことのない感情に襲われた。気味悪そうに逃げる子供達や、怪訝な顔で囁き合う大人たちに構わず、楽しそうに歯のない口で笑う渡辺電機(株)さんが、やがて駆けつけた警官たちに捕らえられ、泣き叫びながら連れて行かれるのを見届け、ハッサンは黙って保育所を後にした。彼の長いキャリアで、任務を果たせなかったのは、この日が初めてだったという…。

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地獄の軍団

 米ジョージア州セントチンポ市郊外に落下した謎の飛行物体を目撃した多くの市民が、手に手にコンドームやエロ本を持って、現場に集まった。飛行物体のハッチが開き、中から姿を現した宇宙服姿の渡辺電機(株)さんが、バツの悪そうな笑顔をうかべて、地球ノミナサン今晩ワ、と裏声で話し始めると、市民はおお、とどよめき、宇宙の陰茎神さま、ようこそ我が地へ。と、供物のコンドームやエロ本、ピンクチラシ、週刊新潮「淑女の雑誌から」の切り抜き等を、差し出した。アッ、これはどうも…と、フラフラと手を出した渡辺電機(株)さんは、殺到した市民たちに捕らえられ、苛烈なリンチを加えられ、骨も残さず死んだ。翌日、偵察から帰ってこない渡辺電機(株)さんを追って現れた本隊宇宙船団の総力攻撃により、人類は滅亡した。

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龍の子太郎

お小水を持って参りました。そう言って執務室に紙コップを手に入ってきた、パジャマ姿の渡辺電機(株)さんを見て、山本太郎衆院議員は状況が飲み込めず、はぁと生返事をして、渡辺電機(株)さんを眺めていた。なんやこのオッサン。議員会館の警備態勢は、どないなっとんねん。デスクの下の緊急コールボタンに手を伸ばした、その目の前に置かれた紙コップは、美味しそうな香りを漂わせるキャラメルマキアートで満たされており、そこには「山本先生Happy Birthday」の文字。あ、今日おれ誕生日や。ほっこりとすると同時に、張り詰めていた心がゆっくりと緩んで行き、太郎の体は一匹の大きな龍に姿を変えていた。議員会館から一筋の白い煙がゆっくりと立ち上り、青空に溶けて行く。太郎は、空に帰って行きました。

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格闘王ムサシ

生意気な渡辺電機(株)さんをシメてやるッ!そう意気込んで鼻息も荒く武蔵川部屋を飛び出して行った武蔵丸、出島、武双山ら横綱大関の面々は、やがてションボリと萎れて戻ってきた。マル、どうした。訝しげに尋ねる親方に、武蔵丸が悲しげに顔を歪める。親方は、もういないんです。何を言うか、と立ち上がる親方を制し、3人は黙って稽古場の土俵の中央に正座し、親方と向き合った。親方は、3年前の秋場所中に倒れられて、そのまま亡くなったじゃありませんか。おい、何言ってんだ。おれはまだピンピンしとるぞ!ほれ、ウィキペディアにも書いてある。そう言ってスマホ画面をいじっていた武蔵川親方は、やがて驚愕の表情を浮かべる。何だあ?おれ死んだことになってんぞ!?3人が顔を見合わせ頷きあった、その時。キキッ!!けたたましい笑い声に一同が振り返ると、稽古場の天井に張り付いた渡辺電機(株)さんが、耳まで裂けた口に牙をむきだして笑っていた。またてめえのイタズラか!勝手におれのWIKI編集しやがって!激昂した親方が投げつけたにんじんスティックをかわし、渡辺電機(株)さんはモモンガのように空中を滑り、窓の外へ消えた。怒りの形相で肩で息をしながら、親方はいつまでも窓を睨みつけていた。あの野郎、生意気にもほどがある…。それでも、翌朝一番に稽古場に現れ汗を流す渡辺電機(株)さんには、親方も一目置いていたのである。名古屋場所が、もうすぐ始まる…。

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Go West!

丸善で平積みにされた梶井基次郎全集の上に、そっとレモンピープルを置いて立ち去ろうとしたところを店員に取り押さえられ、苛烈な拷問を受けた渡辺電機(株)さんは、四肢に重い障害を背負い、二度と空を飛ぶことも時を超えることもできない身体になった。それにしても、今どきレモンピープルなんて良く手に入ったね、電機さん。リンゴの皮をむきながら、マチャアキが感に堪えないといった表情で首を振る。ちきしょー、おれもロリコン雑誌ほしいなあー。ちょっと遠いが、探しに行くかい。電機さんの言葉に、マチャアキは目を輝かせる。おいおいおい話がわかるなぁー!よっしゃ!その話、乗った!パチンと指を鳴らすと同時に病室のドアが開き、岸部シローと西田敏行が、入ってきた。天竺への旅が、始まった。

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電機阿佐ヶ谷気分

敢えて今、満員電車で新聞を小さく折りたたんで読む!これがパンクの精神!そう絶叫して、JR中央線阿佐ヶ谷駅から満員の東京行き快速に乗り込もうとした渡辺電機(株)さんは、不慣れな通勤ラッシュの殺気立ったサラリーマンたちの気迫に圧倒され、あんっ、と小さく悲鳴を漏らし、ホームに弾き飛ばされた。転げた拍子に手から落ちた大事な昨日の東スポを、先を急ぐ通勤客の靴が次々と踏んでいく。ここは、おいらなんかがいちゃいけねえ場所なンだ…。すっかりしょげて、ホームのベンチに座ってめそめそ泣いていると、一度閉まった快速東京行きのドアが再び開き、線路に立ち入ったお客様が…云々というアナウンスが流れた、乗客たちの顔に浮かぶ失望、怒り、恐慌。どよめき。「アッハッハーざまあみろい!」自販機の上に飛び乗り、全裸で尻をぱちぱち叩いて乗客たちを挑発する渡辺電機(株)さんに、殺気立った数万の視線が、一斉に注がれた。東京を壊滅へ導いた、阿佐ヶ谷暴動の発端であった。

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