渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

君の名は

お前は柳の下の幽霊みたいに生気がないから、柳ユーレイだ。お前は大阪から百万円持ってきたから、大阪百万円。東国原はそうだな、お前はそのまんまでいいだろう。で、お前はあれだ、ツラがまえも性根も最低のゲス野郎だから、ゲスラだ。たけしの命名を受け、軍団員たちはその珍妙な芸名で、それぞれの長いタレント人生を送っていくことになる。ただ一人、ゲスラと命名された渡辺電機(株)さんだけは、どうしても納得できなかった。いくら殿からいただいた名前でも、ゲスラと名乗るなど、親にも申しわけないし、タレもカケないし、おぜぜも儲からねえでやんしょゲスゲスゲス!出っ歯をむきだして、甲高い声で笑った。女のあそこを叩いてみれば、文明開化の音がする♪ と最低の替え歌を歌い、腰を前後に動かす下品な踊りを舞いながら去って行き、そのまま芸能界を離れた彼の行方は、誰も知らない。

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禅智内供を嗤ったな!?怒気を放つ目、凶暴な笑みを浮かべる口元、そして象の陰茎のようにそそり立つ巨大な鼻!デカバナ坊主、和尚の鼻ちんぽ、などと嘲笑し陰口を叩いた村人は、一人残らず禅智内供の暴力の前に命を奪われ、村は無人の廃墟と化した。村人の血で真っ赤に染まった小川の辺の道を、返り血を浴びニタリニタリと笑いながら、巨大な鼻を揺らして歩く禅智内供は、都へ出ようと決心した。いつまでもこんなクソ田舎でバカにされてたまるかよ!高笑い。そのとき、ふと鼻にむずがゆさを覚えたと思った次の瞬間。激烈な痒みに襲われ、禅智内供は悲鳴を上げ、巨大な鼻に爪を立てばりばりと力任せにかきむしった。鼻の表面の無数の毛穴が盛り上がり、白く巨大な蟲が、肉を食い破り次々と這い出してきた。のたうち回る禅智内供の身体は、見る間に白い蟲の群れに覆われ尽くした。蟲が徐々に這い出して村道の草むらへ散って行き、ついに一匹残らずいなくなった跡には、もう何も残っていなかった。

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キャリー

ついに日本政治史上初めての女性宰相が誕生!衆院本会議での決選投票で安倍晋三を倒し、みごと総理大臣の座に就いた蓮舫が、栄光の玉座について第一声を発しようとした時。頭上のバケツが裏返り、大量の豚の血が降り注いだ。鮮血に染まり呆然と立ちすくむ蓮舫は、腹を抱え指差して爆笑する与野党の議員たちを見て、彼らの無慈悲な罠にはめられたことを知った。底知れぬ怒りと哀しみと絶望が、蓮舫の体の奥に眠っていた、真の力を引き出した。覚醒。どこからともなく流れ、次第に大きくなる「フラッシュダンスのテーマ」に乗って、切れ味の鋭い動きで踊り始める蓮舫。与野党の壁を超え、固唾を呑んで見守る議員たち。血しぶきを跳ね散らかしながら、激しく踊り狂う蓮舫に、嵐のようなスタンディングオベーション。まさに熱狂。かつてない情熱的な、真の日本政治の夜明けだった。

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どてらい男

TVドラマは全部つくりばなし!ヤラセ!いんちき!だから絶対観ないンだ!と鼻息荒くまくしたて、大好きなマクドのアイスコーヒーのストローに吸い付く渡辺電機(株)さん。頬をすぼませ、激しい吸飲音とともに一気に吸い上げ、最後にチュゴゴッと未練がましい音を響かせた。眉根にシワを寄せてストローから口を離し、みるみる顔をくしゃくしゃにしたと思うと、両目から大粒の涙をあふれさせ、わっと泣き出した。シロップを入れ忘れて、苦かったのだという。しゃくりあげる渡辺電機(株)さんに甘いアップルパイを勧めながら、おれは原稿依頼の話を切り出すのをやめ、ため息をつく。無邪気にパイにかぶりつく姿を、絶望的な気持ちで眺めた。この人、もうあかんねや…。

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渋谷系の終焉

渡辺電機(株)さんを中心に再結成されたフリッパーズギターは、渡辺電機(株)さん以外は、トルコ人失業者とシルバー人材センターから派遣されたお年寄りで構成されていた。もちろん、主要メンバーであった小山田、小沢両名にも参加の打診はしたが、返答はなかったのである。それでもバンドの知名度とオールドファンの期待は大きく、渋谷クアトロの復活ワンマンは、早々にソールドアウト。当日、売上げと宣伝費をリュックに詰め込んで、品川で羽田行きの快速に乗ろうとした所を、協賛企業の社員たちに取り押さえられた渡辺電機(株)さんは、泣き喚きながらクアトロの楽屋まで連行された。とりあえず舞台に出て歌えば、アリバイ成立だから。刑事責任はないから。説得され、押し切られて渋々ステージに登場した渡辺電機(株)さんは、ライトの眩しさに顔を歪めてまばたきした。次第に目が慣れてくるにつれ、超満員のフロアーがくっきりと見え始めた。フロアーを埋め尽くしているのは、汗びっしょりの全身から湯気を立てて仁王立ちする、見渡す限りの相撲取りだった。

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Rebel Rebel

わあんドラえもん、いじめられたよう。額に11針も縫う大怪我をして、横綱稀勢の里が泣きながらやって来た。仕返ししたいようドラえもん。ドラえもんじゃねえ、電機さんな。もう何度目になるか、噛んで含めるように言って横綱の鼻の頭をつついてやると、おとなしくなった。でもぉ、ドラえもん…。わかったわかった。とにかく、だ。稽古の怪我か。相手がにくいか?首を振る横綱。そうだ、えらいぞ。天下の横綱が、稽古相手にやられたからって根に持っちゃいけねえ。横綱が本当に倒さなきゃいけねえのは、体制そのもの、国家権力。そうだろ。今こそ立ち上がるときが来たんだ!革命だ!民衆に力を!やろうぜ横綱! …電機さん、やっぱりそうだったんだな。先程までの甘えて見上げる幼い表情は消え、無表情でおれを見下ろす横綱の眼は、冷酷に光っていた。翌朝、額に大きな絆創膏を貼った横綱稀勢の里の写真が新聞紙面を飾ったが、渡辺電機(株)さんの処刑については、ひとことも触れられていなかった。

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