ストップ！ひばりくんと制止されるまで、ひばりくんは何をしていたのか。それは、作者の江口氏にも、よく分かっていなかった。ただ、ひばりくんの頬に薄っすらと生えそろった無精髭と伸び放題の鼻毛、薄くなった頭髪、弛んだ目の下に沈着したシミ、脇腹のブ…

車椅子で移動する五体不満足な文化人の背後を、リモコンを操作する仕草をしながら付いて歩き、ゲラゲラ笑っていた横綱を、渡辺電機(株)さんはいつに無い厳しい口調で非難した。どうせやんならよォ、世界を相手にしろや！そう言って突如「パイルダーオン！」…

漫画界広しと言えども、現役の横綱に本気で「殺してやる」と面と向かって言われたのは、おれくらいのものではないか。そう自信満々にうそぶいた次の瞬間、渡辺電機(株)さんの肉体は激怒した横綱の本気の張り手で、吹っ飛んで窓の強化ガラスを突き破り、100ｍ…

東海道線の最終電車が由比駅までしか行かないので、夜更けの無人のホームで途方に暮れて車庫へ去っていく列車を見送っていると、背後から、今日はどうされます？と声をかけてきた駅員には、顔がなかった。この辺りにむじなが出るという話は聞いていたので、…

スキーシーズンが終わり、苗場のスキー場も雪解けとともに、スキー客が食い散らかした越後湯沢名物のささだんごの笹の葉が、ゲレンデに点々と散らばっているのを、渡辺電機(株)さんは見逃さない。バイトの力士たちを雇ってかき集め、エサ不足に困っているで…

連載は全て打ち切られ、電子書籍の各社にも回状が送られてデジタルコミックの収入も閉ざされ無収入となり、部屋の力士たちを養う金が必要な渡辺電機(株)さんがとった最後の手段は、漫画の神様・手塚治虫を盗作で訴えるという暴挙だった。あの医者のマンガも…

会社でのいじめを苦にしてラッシュアワーの中央線に飛び込んだが、体当りした車両が粉々に大破し自分は傷ひとつ負わなかったことから、意外と頑健な肉体を初めて自覚した渡辺電機(株)さんは、JR東日本への莫大な賠償金を捻出する必要もあり、アメリカ国防総…

漫画家を辞めて牧場経営に乗り出した渡辺電機(株)さんだったが、ねずみ算式に馬が殖えて元手もかからずドンドンもうかるって寸法よ！などと胸踊らせていた皮算用は見事に外れ、馬どころか牧場の土地を買う金もなく、日高の原野に勝手にホームセンターで買っ…

コンビニの廃棄品からくすねた賞味期限切れのカップうどんを、水でふやかして食うのはあまりに情けなくて泣けてくるので、せめてぬるま湯を…と、風呂の残り湯を分けて下さいと宮城野部屋を訪れた渡辺電機(株)さんだったが、力士たちの対応は冷たかった。だめ…

ちゃんこでも食べにいらっしゃいという横綱の社交辞令を鵜呑みにして、持ち帰り用のタッパーまで持って夕食時の宮城野部屋に現れた渡辺電機(株)さんを、横綱を筆頭に力士一同は困惑の表情で迎えた。意に介さず上座に座り、さあさあジャンジャン持って来い！…

沖ツ海、坂東三津五郎、そして渡辺電機(株)さん。フグ毒が元で命を落とす話は枚挙に暇がないが、中でも渡辺電機(株)さんは、フジロック会場でグリーンステージの超満員の観衆を前に、トラフグのケツの穴に直接口をつけて内臓を一気に吸い込み、拍手喝さいを…

NHKのど自慢で場内の失笑を買い、一瞬で鐘一つに終わり、ゲストの北島三郎をして苦虫を噛み潰した顔で「放送事故だ」と言わしめた渡辺電機(株)さんは、さんざん出演を自慢して村からやって来た手前、どの面下げていまさら帰れるのかと、それきり放浪の旅へ出…

スマホ落としたッ！！あわててNYヤンキースのスタジャンを羽織り、半狂乱で稽古場を飛び出していった横綱は、部屋の前を通るバイパスでスポーツカーに跳ねられ、宙を舞って歩道に叩きつけられ、血を吐きながら少し痙攣し、動かなくなった。おや？今カエルを…

スロで生活保護の金全部いかれたので、あったま来てそこらにおいてあるチャリパクって国技館まで走り、理事長室で八角を締め上げて結びの前にムリヤリおれの取り組みを突っ込んだ。相手はもちろん横綱だ。ダチを相手にまさか本気は出さねえだろうとタカをく…

ブラタモリのロケがおらさ村にもやって来る！村人総出で旗を振って出迎えたスモークガラスのハイエースから降り立ったタモリは、明らかに横綱の変装だった。では、この中に渡辺電機(株)さんが隠れているのか。不安なざわめきが広がって行く。タモリに変装し…

子供も手がかからなくなり、何もすることがない空虚な余暇を過ごす内、無趣味な自分に初めて気づいた渡辺電機(株)さんは、同僚に誘われて始めた蕎麦打ちにのめり込み、ついには退職金を前借りして自宅を改装、手打ちそばの店を出すに至った。泣いて止めた妻…

実家の母親の友人が横綱白鵬のタニマチで「おかあちゃん」と呼ばれる仲と知り、ブログを読まれたら一巻の終わりなので生きた心地がせず、殺す以外に選択肢はない。思い詰めた渡辺電機(株)さんはヨドバシドットコムで出刃包丁を注文し、届くのを待ちながら殺…

井の頭公園に隣接する焼き鳥の名店「いせや」にてメンドリの姿焼きを注文、運ばれてきた老いた雌鶏の丸焼きを見るなり「かあさん」と絶叫、ピコピコハンマーを手に泣きわめきながら店員に殴りかかった渡辺電機(株)さんは、非常識な暴漢としてアルカトラズ監…

メキシコ修行時代はエル・ポコチーノと名乗ってマスクを被り、飛んだり跳ねたり時には大小便を撒き散らすド派手なルチャドールとして、現地のファンも多かった渡辺電機(株)さんだが、日本に帰ってからの漫画家生活は貧しく惨めなものだった。マスクを被って…

上岡龍太郎を怒らせて漫画界を追放された渡辺電機(株)さんだが、あれから20年を過ぎた今でも、当時の話になると途端に口が重くなるという。それほどにまで深い心の傷をどのようにして負わされたのか、本誌は説得に説得を重ね、ようやく話を聞くことに成功し…

ゴリラの脳を生きたまま食う！中国四千年の食の歴史において闇中の闇とされる幻の料理、はるばるシルクロードを運ばれて唐の国に送られたゴリラを、皇帝が活造りにして食べたと言われる、まさに超弩級のグルメに挑戦した渡辺電機(株)さん。無謀にも混雑する…

「ハッピー興行社の熊山です」そう言って名刺を差し出した強欲そうな男は、よく見れば明らかに横綱の変装だった。モスラの卵を目玉にした一大観光レジャーランドの構想を語る横綱が気づくと、黙って話を聞いていた宝田明の身体がゆっくりと、前のめりに倒れ…

かつてはアイドル声優として「アイドル天使ようこそようこ」「ドン・ドラキュラ」などに主演してアキバを熱狂させ、歌手として紅白にも出場した渡辺電機(株)さんも、今では酒焼けしたしわがれ声で口汚く悪態をつく酔いどれ中年男として、街の鼻つまみ者だっ…

寝ている間に、ペットのカニクイザルに頭をかじられて脳の一部を欠損してしまい、渡辺電機(株)さんは正常な思考を失い、カニのような横歩きしか出来なくなってしまった。カニクイザルもの食うべからず！カーニカニカニカニ！！口から泡を吹きながら笑い、猛…

タイムマシーンで一週間前に行って馬券を…などと、相変わらず不可能な夢想にうつつを抜かしている内に、またしても原稿の締切が待ったなしになってしまった渡辺電機(株)さん。貧しい暮らしと時間に追われる毎日の中で、少しずつその心は病んでいきました。タ…

一世一代の男の夢を応援してやれないそんな国、こっちから捨ててやらぁ！そう言って、ソープランドに行くための助成金の申請を文科省に門前払いされた渡辺電機(株)さんは、男・電機丸と名付けた盗品のイカ釣り漁船で、勇躍大海原へと飛び出した。海の向こう…

えすくれめんとお！怒りの火柱が、渡辺電機(株)さんの身体を突き抜ける！泣きながら両手を振り回し、渡辺電機(株)さんの大事なああっ女神さま！の缶ペンケースを持って教室を逃げ回る力士たちを追いかけ回す姿は、とても一国の宰相の姿とは思えなかった。捕…

カニ食いてー！！絶叫しながら着衣のままザブザブと、長万部の砂浜から函館湾の海に駆け込んで行った渡辺電機(株)さんは、それきり姿を現さなかった。この辺はホタテばっかで、カニはあんまし獲れないんだあー。海を見つめながら北海道なまりで呟いた漁師は…

邪進化を遂げて昆虫人間になった渡辺電機(株)さんだが、その屈託のない笑顔は以前と少しも変わる所がなかった。こうやって黒い甲羅に守られてて、無敵だと思うっしょ。でもね、ほら、お腹はこんなブヨブヨで無防備なの。なんでこんな秘密をアンタに話したと…

筆者の友人が先代柳家小さん師匠の最晩年、紀伊國屋ホールでの高座を見ているのだが、これが「笠碁」と「碁泥」が混ざってループしてしまい、とうとう見かねた弟子が観客に謝罪して師匠を舞台から連れ去るという、なんとも切ないものであったという。あの名…