それがし乞食に非ず

はっけよい、のこった！庄之助の声と同時に、地べたに這いつくばって土下座をする渡辺電機(株)さんを、横綱は黙って見下ろしていた。お許し下さいッ！！哀れっぽい目で見上げながら許しを請う渡辺電機(株)さんの背中に観客席から嘲笑が浴びせられ、ペットボトルやミカンの皮、コンドームなどが投げ込まれる。なおもくどくど命乞いの長広舌をまくし立てる渡辺電機(株)さんから視線を引き剥がし、横綱は背を向けた。バカや朗、神聖な土俵で…。失望をあらわに土俵を降りようとする横綱の背後で、渡辺電機(株)さんはニタニタ笑いながら起き上がり、スキありぃと勝ち誇った声を上げながら、マワシの下に忍ばせたアイスピックで襲いかかった。だがそのアイスピックは何者かの手によって、甘くておいし〜い千歳飴とすり替えられていたのである。横綱の背中でポッキリ折れて２つになった千歳飴を、花道を横綱と並んで仲良く１本ずつなめながら歩いていく渡辺電機(株)さんに、場内の温かい拍手と励ましの声が心地よかった。やっぱ、正々堂々やんなきゃな…。そう誓った渡辺電機(株)さんだったが、次の場所に持ち込んだ神経ガス弾でとうとう横綱の怒りを買い、その日のうちにマイミク削除されてしまったという。

 松本隆の歌詞が感性にグサグサ突き刺さる名曲。スバラシイ歌声を聴かせるボーカルのマオさんは日独のクラシック演奏家の間に生まれた混血の美青年で、この後いくつかの音源を残した後、渡米してクラシックミニカーのディーラーに転身、音楽をやめてしまった。近年は日本に戻っているようで、いかめしい本名で検索してみたら去年の秋、Googleのフォーラムでマップの仕様について注文をつけておられ、ご健在のようだった。

海賊キッドの冒険(紙ジャケット仕様)