渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

ハードボイルド

ヨウヨウ姐ちゃん、乗らない?年甲斐もなく真っ赤なネッカチーフにストライプのピチTでキメた渡辺電機(株)さんが、晴れた土曜午後の心斎橋の雑踏で四つん這いになり、道行く若い女性に声をかける。どうだい、イカスだろ?立てた親指で指し示す背中の座布団には、ルイヴィトンの紋様。おっかしいな、若けえ頃はコイツでどんなスケもイチコロだったんだが…。往年のプレイボーイも、寄る年波には勝てないのか。よう運ちゃん、大国町までやってんか。背後から掛けられた男の声に顔をしかめ、あほんだらタクシーちゃうど、ワラなめとんけ。そう言ってスゴんだが、声の主は意に介さず、渡辺電機(株)さんの背中の座布団にドッカと腰を下ろした。その瞬間、全てを思い出した。この背中に伝わるケツ肉の感触。ま、まさか…師匠?はて、なんのことかわからんな。それより大国町や。運ちゃん、急いでや。チップはずむさかいにな。聞き覚えのあるその声は明らかに、かつて渡辺電機(株)さんに破門を言い渡した関西落語会の重鎮、桂三枝その人だった。今まで苦労してきたんやな、ケツに伝わる背中の感触で、わかるで。おだやかな師匠の言葉に、一歩も進むこともできず嗚咽を漏らす渡辺電機(株)さんの背中に、じんわりとぬくもりが広がった。季節外れの蝉しぐれのような音を立て、ゆっくりと失禁する三枝を乗せたまま、むせかえる尿臭と湯気の立ち込める中、いつまでも泣きじゃくる渡辺電機(株)さんだった。

冒頭のチープなシンセ音にウッとなるのは80年代ポンプロック勢の宿命みたいなものですが、ドイツのバンドにしては繊細で、キャメルをもっと儚くした感じ。一応まだ存続してるらしい…。バンド名は日本でいうと「二宮尊徳」みたいなもんでしょうか。

RETREAT (2015 REMASTERED)

RETREAT (2015 REMASTERED)